キャリア

2023.07.13 10:00

スタンフォード大コーチが思う 日本式「後半投資型」子育ての悪。さて米国は?

心に残る、ある2つのフレーズ


コロナ禍真っ最中に友人のK氏と交わした、希望に満ち溢れた会話を今でも鮮明に覚えている。K氏は泣く子も黙る高収益かつ高収入な会社で管理職として働きながら、自分の夢である教師になるために、コロナ過のリモートワーク環境を最大限に利用し、教員免許を取得した強者である。

「子供が1日でも早く自分のやりたい仕事や夢が見つかる社会、そして教育が実現できたらいいね」

「それには、その夢を追ったことによる失敗を容認できる社会が必要だな」

この2つのフレーズは、今でも私の心の引き出しの一番上の中心に大切に収納されている。

スタンフォード大学アメリカンフットボール部のリクルーティングイベントにて


先週末、我々スタンフォード大学アメリカンフットボール部にとって最も大事なイベントのうちの一つ「Official Visit」なるものが開催された。2024年に入学してくる学年の高校生を対象に、我々が喉から手が出るほど欲しい高校生とその家族を全米中から20人以上招待して週末の2日間、スタッフ総出でスタンフォードの良さを理解してもらうというイベントである。

彼らが興味を持つ分野の教授を同じテーブルに呼ぶ食事会もある。そのテーブルでは当然、アカデミック分野での興味関心を中心とした会話とともに食事が進んでいく。ほかには、フットボール部OBとのセッション、現役の学生との質疑応答などなど──。「これが本当に高校2年生なのか!」と、自分の目と耳を疑い続ける週末であった。

子供の頃から野球漬けで野球部の寮に入って、野球部クラスで勉強して、指導者が進めた大学を目指すような生活しか知らない高校生からは、このようなコミュニケーションは決して生まれないであろう。

Tetra Images / Getty Images

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今日この日、何人の大学生が、確固たる目標とともに就職先を選んでいるだろうか。その絶対数を増やす近道の一つは、物心ついた時から高校生に上がるぐらいまでに、いかに親が子供に「選択肢を与えてあげられるか」ではないかと筆者は思う。経済的問題、地域特性などなど、取り除かなければいけない障壁はいくつもあるだろう。しかし、親として子供に与える選択肢を大人の都合だけで著しく狭めることだけは、やってはならないことだと考える。

個人が尊重される範囲が多くなってきた2023年、未来ある子供達にまで横並び意識を強いるようなことを避けたいと思う人も増えてきているはずだ。そんな時、自分とその家族の周りに、いかに多くの情報があるか、そしてどうやってそういった情報を探しあてるかは、子供の将来へ向けての最初のターニングポイントであるのかもしれない。

本稿でシェアした情報も機会のひとつにして、子供との向き合い方やコミュニケーション、なによりも親としての自分と向き合う時間を創っていただければまことに本望である。

(後記)

──と、結んだところに長年の友人からの連絡があった。この8月、東海岸のボーディングスクールに通う息子と一緒に、筆者が住むスタンフォードを訪ねてくれるそうだ。恐らく大学進学を考える年頃で、興味のある学校をいくつか回るという、アメリカではよくあるイベントだ。

筆者は、その友人夫婦とその息子に聞いてみたいと思っている。ボーディングスクールには自分の意志で行ったのか?どういう学校に行って何を勉強したくて、どんな仕事がしたいのか? ──望まれるか否かは別として、その回答によってはサポートの方法を考えようと思う。

文=河田剛 編集=石井節子

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