アメリカ型子育てには「デメリット」も
「多くの選択肢を与える」ことにメリットが幾つもあるのは自明なので、ここではデメリットにもフォーカスしてみよう。
最も大きなマイナスポイントは、親の経済的負担である。想像してみていただきたい、子供の興味の数だけ、いやその半分でも習い事やスポーツを幾つかかけ持ちして並走した時のコストを。ピアノ、バイオリン等の楽器系、スポーツであればユニフォームや道具等のコストをあげだしたらきりがない。
アメリカは車社会であり、子供が一人でバッグを担いでそれぞれの場所に通うなどということはありえないので、送り迎えの時間やガス代もコストの一つといえよう。競技によっては、年齢が上がってくれば遠征まである。スポーツはシーズン制であるので、それが数カ月単位でまさに「無限ループ」していくことになる。では、どうしてそこまでお金や時間をかけてまで子供サポートをするのであろう。理由は2つあると推察する。
1.シンプルに子供にやりたいことをやらせてあげたい
2.(アンケート調査をしていないため、想像の域を出ないものの)自分達もそのように育ってきたから
とくに2.に関していえば、アメリカでは20~30年周期で、好ましい、「子供の意志尊重型」サイクルが回っているといえる。日本は逆に時代に合わない「親ドリブン」の周期が繰り返されているように見える。
子育てに関して、アメリカは「前半投資型」
一般的にアメリカでは、大学は自分で行くもの、つまり大学の学費は、自分で払うものである。
私の大学院時代にもそういう意識の同級生がいた。同性のパートナーとの間に2人の子供を持ち、フルタイムの仕事+ウーバードライバーをしながら、学費が貯まると、その学期の授業に出てくる。成績は極めて優秀だったが、通常2年のプログラムを3年半かけて卒業したそうだ。
そう考えると、生まれてから大学卒業までを子育ての周期とするならば、アメリカはその前半にコストをかける前半投資型、一般的に大学卒業まで親が面倒を見る、年齢が上がっていくほどコストが増えると予測できる日本は、後半の投資型といえるであろう。
一般の株式投資と同じようにスタートアップに投資することが好きな投資家もいれば、ある程度育った企業をよく見極めた上で投資を決める後半型の投資家もいるだろう。
だが、私が子育てに関する投資アドバイザーであるなら、絶対に初期投資型をおすすめする、いや、そうあるべきだと思う。初期に多額のコストがかかるというリスクは否めないが、できる限りの選択肢を与えて、1日でも早くやりたい仕事を見つけさせ、自分がなりたい大人像を描かせ、夢を持たせてあげることが、「投資先」である子どもが幸せになれる、唯一と言っても過言でないほどの道であるからだ。
この場合の投資家は長い目で、時には厳しい指導で、最大の愛を持ってその成長をサポートしていくべきであることはいうまでもないだろう。もし、その選択を迷った投資家がいたのなら、アドバイザーの私には僭越ながら、殺し文句がある。「私を見てください、好きなことを仕事にしているのが、どれだけ幸せかを!」