サイエンス

2023.07.07 13:45

物議の数学理論、欠陥発見に賞金1.4億円 ドワンゴ川上氏

イヴァン・フェセンコ氏(IUGC 副所長, University of Warwick, Tsinghua University)


この11年間、IUT理論は多くの人によって学ばれ、徹底的に検証され、いくつかの国際ワークショップで議論され、解説されてきましたが、IUT理論の実質的な欠陥を証明する数学論文はいまだに出ていません。数学の世界では、新しい理論はその道の専門家によって評価されるのが常です。

IUT理論の場合、その主な前提条件となる分野は遠アーベル幾何学であり、これは日本の数学者が世界をリードしている分野です。ですからIUT理論の論文が日本の数学雑誌で扱われることは最も適切なことでした。

例えば、ガロア理論、ロバチェフスキーの双曲幾何学、量子力学、アインシュタインの一般相対性理論など、理論に対する有効な反論がないにもかかわらず、その評価に数十年を要した偉大な理論の例を我々は知っています。今回発表された新しい賞は、数学者がIUT理論を確認し、その美しさを評価し、またさらに発展させるよう、刺激を与えることになるでしょう。

川上量生氏(ドワンゴ創業者)



真偽の判定が可能なはずのものが、いつまでたっても決着がつかずに議論されつづけるという現象は、政治や社会の至るところ で、私たちが日常的に目にするありふれた光景です。しかしながら、そういったことは起こらないはずの数学においても、同様のことが起こっている珍しい事件に、歴史の証人として立ち会えたことを光栄に思います。

私見ではありますが、問題の根本はIUT理論の正否を論じるために必要な学習コストが優れた数学者にとっても高くなり過ぎていることだと考えています。私が提供するささやかな報酬が、IUT理論に関わることを決意する数学者たちをひとりでも増やすことに貢献できればと願っています。

IUT Challenger Prizeについては私の個人的な賞とすることにしました。だれに渡すかは私が自分で判断します。もちろん私は数学者ではありませんので、議論の正否を判断する能力はありません。私の望みは、IUT理論について、もし、間違っているのであれば、健全な数学的議論のもとで数学界で決着がつくことです。
 
なお、第1回IUGCカンファレンスは2024年4月、東京で開催される予定。

参考:
日経新聞(2020年4月3日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57648290T00C20A4CR8000/

日経新聞(2021年3月7日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG05BC20V00C21A3000000/

NHKスペシャル(2022年4月10日)
https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/blog/bl/pneAjJR3gn/bp/pzwyDRbMwp/

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(担当=石井節子)

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