またドワンゴ創業者の川上量生氏は、IUGCに対してIUT Innovator Prizeの賞金を提供するほか、個人として、「IUT理論について、理論の本質的な欠陥を示した論文を執筆した最初の数学者に、IUT Challenger Prizeとして100万ドルを贈呈する」ことを表明した。
以上の発表は7月7日、都内の外国人記者クラブで行われ、加藤文元氏(IUGC所長、東京工業大学名誉教授)、イヴァン・フェセンコ氏(IUGC副所長, University of Warwick, Tsinghua University)、川上量生氏(ドワンゴ創業者)が出席した。
関連記事:「abc予想」証明正否に私費で賞金1.4億円、数学界の『混乱に決着を』
望月新一教授と宇宙際タイヒミューラー理論について
望月新一氏は、16歳でアメリカ・プリンストン大学に入学。23歳で博士号取得し、32歳で京都大学数理解析研究所教授となった世界的な数学者である。教授は2012年8月、4本の論文をインターネット上に公開した。整数を扱う数学理論の分野では「最も未解決の難問」ともいわれるabc予想などを、足し算とかけ算の「絡まり合い」をほどくことで解決できるとする「IUT理論(宇宙際タイヒミューラー理論)」である。
7年半におよぶ審査ののち、望月教授の論文は2021年、京大数理解析研究所が編集する国際専門誌「PRIMS」に掲載されたが、ペーター・ショルツェ氏など非常に著名な数学者が批判し、多くの研究者の中で「IUT理論は真偽が不明、あるいは正しい証明が与えられていない」という空気が蔓延している。現在では、議論が膠着状態となり、理解が進みにくい状態にある。
IUT理論を巡るこのような状況に対して、理論の発展と議論の活性化を促進するため、国際的な賞を制定し研究集会を組織する、という。
以下、おのおののコメントである。
加藤文元氏(IUGC 所長、東京工業大学名誉教授)
IUGCはIUT理論の普及と発展を推進するための様々な活動を行うことをその使命として誕生した、数学の新しい研究所です。IUT理論自身はもちろんのこと、遠アーベル幾何学などの関連する分野の研究振興、さらには理論研究の社会への発信や、そのフィードバックを通じた研究者のキャリア形成と社会還元という視野からも、多様な活動を主催しサポートしていきたいと考えています。IUGCとしては、今回の賞の創設と国際カンファレンスの開催が以下2点に対して有効に資するであろうことを重視しています。
・IUT理論の発展・振興、特に若い世代の参画を奨励すること
・世界の数学コミュニティがIUT理論について数学的に正確に定式化された形で健全な議論を行うことを強く呼びかけること