「とはいえ、学生たちには苦労をかけているとは思います。いろいろなハードルを前に自問自答したり、苦しんだりすることもあるかとは思います。しかし、自分たちは頑張ってやれたなと思っていても、まだまだこれからだよということは大人として伝えて行かなければいけない。きちんと褒めるところは褒め、“実るほど頭を垂れる稲穂かな”じゃないですが、謙虚にあらねばならないということも伝えていきたいですね。
本当にみんなよくやってくれています。最近は愛おしくてしょうがないですよ(笑)。このようなスタンスで社会に出ていけば、間違いなく可愛がられる人間になるでしょう」(大森監督)
「コミュニティカフェ」開設など、新たなチャレンジも
神奈川大学サッカー部の竹山団地での取り組みは今、新たなチャレンジをスタートしようとしている。コミュニティカフェの開設だ。大学で学んでいる知見を、地域の課題解決に生かそうと4年生(取材当時)が提案した。「彼らも大学でいろいろなことを学んでいますので、地域にはこういう課題がある、我々でなんとかできないかということで考えたのがコミュニティカフェです。山口君がリーダーとしてやっている食堂と、スマホ教室などでの経験を生かし、商店街や企業の力も借りながら地域の賑わいを取り戻していこうじゃないかという取り組みです」
学生が自らアイデアを出し、主体的に動こうとしていることが素晴らしい。コミュニティカフェは12月にスタート予定だ。今後は、商店街の空き店舗や銀行の跡地などに、スポーツジムなども含めた複合施設を作る計画もあるそうだ。
「学生たちが、このような地域の環境の中で経験を積んでいくことで新しいアイデアが生まれ、活動を担い幸せの種となった学生たちが社会に出ていって、さらにさまざまな場所で幸せの芽となってくれたら、こんな幸せなことはないですよね」(大森監督)
話の中で印象的だったのは、山口さんの「ここで成長させてもらったことは自信に繋がっている。ここでの経験は、社会に出て絶対に生かしていかなければいけないと思っている」という言葉だった。
大森監督は「『F+1(Football+1)』ではなく、『F+11』ぐらいの多岐にわたる活動で試行錯誤している」と語っていたが、ウェルビーイングを推進するツールとしてのスポーツの大きな可能性を感じさせる力強い言葉をもらった。