耕作放棄地も活用 収穫した野菜を寮の食堂で提供
大森監督の考え方に惹かれたのも、神奈川大学を志望した理由の一つだと語った山口さん。監督からも絶大な信頼を得ている。寮生の食生活をサポートする食堂のリーダーを務めていることも理由のひとつ。というのも、この食堂はただの食堂ではない。なんと、食材の一部は自分たちで耕した畑から収穫したものを使っている。
「高齢化や後継者不足で、竹山団地周辺の横浜市神奈川区羽沢地区には耕作放棄地や休耕地がいっぱいあったんです。そこを借り受けて、僕たち神奈川大学サッカー部員と、以前から選手が農業を行っているサッカーJ3所属のY.S.C.C.横浜と連携して耕作するプロジェクトをスタートしました。
ぼうぼうに生えている雑草を自分たちで抜くことから始めて、地域の方々、農家さんにも手伝ってもらいながら野菜を作っています。農業なんて最初は全く興味なかったのですが、野菜が売れるまでの仕組みを知り、農家さんの気持ちがわかって知識が深まったし、ずいぶん考えも広がったなと思います」(山口さん)
団地内に食堂を作った当初は、住民の利用も考えていたそうだが、コロナ禍の影響で断念。現在は、寮生に昼食・夕食の提供を行っている。ところで、食堂のリーダーとはいったいどのようなことをするのだろうか。
「献立は専門のスタッフの方に決めてもらうのですが、調味料など食材の在庫管理はリーダーの役割で、足りないものや必要なものがあったら食材発注担当の学生に指示して業者の方に持ってきてもらいます。昼食は食品保存容器での提供になるんですが、これは専門のスタッフ1人で、夕食はスタッフ1人と学生2人の合計3人で交代しながら調理しています。食べ終わった昼食の容器を返しに来ない学生もいるので、僕がリーダーとしてみんなに呼びかけます。
夕食が終わると片付けて最後の〆が清掃です。みんなが食事をするところですから衛生管理も重要なので、リーダーは最後まで残って学生に声をかけて食器を消毒したり床を拭いたり、定期的にグリストラップという厨房の下の油が溜まるところも清掃します。これが本当にものすごく汚くて臭いもキツいんですが、最近ではこういうことが大事だということをみんなも気づいてくれてよくやってくれています」(山口さん)
リーダーは、人の嫌がることも率先してやらなければいけないし、仲間に声をかけて一緒にやるよう促すことも大事だ。嫌な顔をされることもあるだろう。心が折れそうになることもあるのではないだろうか。
「自分は最初は人に強く言うとか、やらせる力というものがありませんでした。でも、リーダーになって、自分でやるのはもちろんなんですが、人に仕事を振ったり、きちんとやってもらうことを徹底したりする力というのは、ずいぶんついたように感じます。自分の成長にも繋がることなので、リーダーをやって良かったなと思います。
家に帰ると、両親に考え方や経験値的にも大人になってきたねと言われるんです。良い経験をさせてもらってありがたいと思います」(山口さん)