宇宙

2023.07.03 10:00

天文学界を沸かせた大発見「背景重力波」をわかりやすく解説

発見された背景重力波は、超大質量ブラックホールのペアが合体する数百万年前、互いに周回していたときに発生したものかもしれない(Getty Images)

それを理解する上でまず、次の光景を思い浮かべてみてほしい。
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宇宙が湖だとして、そこをカヤックに乗った人たちがリズミカルにバドルを漕いでいる。そこにモーターボート2隻が、互いを追いかけ合って円を描くように走り、その結果として水面に波紋が生じる。この波紋によってカヤックがぐらつき、リズミカルなバドリングをわずかに狂わせる。こうしたモーターボートのペアが同時に何十組も存在し、同じことをしている。

これと似た光景を、科学者たちが見たのだ。研究チームは、「パルサー」と呼ばれる、数ミリ秒毎に回転しながら非常に正確な周期で電波を出す中性子星68個から発せられる光を観測した。「宇宙時計」とも呼ばれるパルサーは、カヤックを漕ぐ人のパドルのようなものであり、研究チームはその微かなリズムの変化を検知することで、湖面に広がる波紋のような乱れを発見した。

モーターボートはもちろん、互いに周回して波紋を起こす超大質量ブラックホールのペアだ。こうした波紋には、それぞれの起源に関する情報や、重力そのものの性質に関するヒントが隠されている。研究チームが次に目指すのは、この波をたどり、その発信源となっている超大質量ブラックホール連星を突き止めることだ。天文学の世界ではまだ、超大質量ブラックホール連星の存在を1つも確認できていない。

一般人にとっての意味

背景重力波の検出は、時空の構造、重力の性質という、人類が今作りあげている自然界に関する基礎的知見のあらゆるものに関わっている。これは私たちが住む宇宙の本質に迫るものであり、その理解はまだ始まったばかりなのだ。
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forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫・編集=遠藤宗生

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