立札を立てる
出島組織は本体組織と比較すると、組織の規模は小さい。リソースが限られているからこそ、そのリソースをどこに割くのかが重要になってくる。電通の出島組織である私たち電通BチームはPlan B専門チームということで、Aチーム(本体組織)がやれる仕事はやらないという方針を掲げた。そうすることで独自のプロジェクトに優先的に集中して取り組めるようになった。本体組織とのあいだにBチームという「立札」を立てることで、新規のチャレンジにリソースを注ぐことができた例といえる。必要な人やものだけを招き入れ、それ以外のものが入ってこないようにする。橋は横やりを防ぎ、自由を獲得し、新しいことに挑戦しやすくするためのツールだ。社長直轄の部署にして、ほかの部署の干渉を受けないような組織にするやり方もあるだろう。あなたがマネジメントをする立場の人間なら、出島の人たちに口出しをしすぎないことが大切になるだろうし、出島側の人間なら口出しをさせないための条件をうまく築けるとよい。
物理的な距離をとるのが難しいときは、リモートワークをしたり、打ち合わせ場所を社外のカフェにすることから始めてみてもいいかもしれない。とりあえず出島組織を名乗って、お揃いのステッカーやTシャツをつくるところから、まず立札を立ててみるのもよいだろう。「あいつらは遊んでばかりいてうらやましい」とか「何をやっているかわからない」と言われがちなのは、出島組織あるある。ときどき橋をわたって、本体組織に成果を共有することも大切だ。
何か新たなことに取り組むときに、異なる分野の人たちとつながることは確かに重要だ。本体組織との連携も必要なことは間違いない。だが、閉ざすことで生まれる自由や発想もある。出島の橋が、そんなことを教えてくれた。つながりすぎだと感じているあなた。その橋、閉じてみてはどうでしょう。
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電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。
鳥巣智行◎Bチーム平和担当。広告やキャンペーンの企画制作、商品開発や企業研修などに携わりながら、ライフワークとして平和活動に取り組む。2021年、故郷長崎で会社Betterをスタート。出島組織サミット実行委員会会長。