なおシプロフロキサシンは米国で2番目に処方数の多い抗生物質だ。ローゼンバーグ教授の研究グループと、他の多くの研究室も、シプロフロキサシンにさらされた細菌培養物は遺伝子突然変異の率が増えることを発見している。これは、シプロフロキサシンが細菌のDNAを破壊することにより細菌にストレスを与えるためだ。これらのDNAの破壊は蓄積され、それを修復するための遺伝子ストレス応答を引き起こす。
しかし、ローゼンバーグ教授と共同研究者たちの実験スクリーニングにより、細菌が抗生物質耐性を進化させる能力を減らすだけでなく、それ自体が抗生物質でないため細菌がそれに対して耐性を持つことはないという薬剤が見つけられた。その薬剤とは塩化デカリニウム(DEQ)である。
ローゼンバーグ研究室のポスドク研究員である主著者のイン・ジャイが「私たちは、DEQが両方の要件を満たしていることを発見しました」と声明で述べている。「シプロフロキサシンといっしょにDEQを投与すると、実験室での培養と感染させた動物モデルの両方で、抗生物質耐性を持つ突然変異の出現が減少し、また細菌はDEQに対する耐性を獲得しなかったのです」
新しい抗生物質が使用可能になると、たとえこれまでその抗生物質が使われていなかった感染症でも、すぐに効果が失われてしまうことが多い中、これは非常に良いニュースだ。
イン・ジャイはさらに「さらに、私たちは低いDEQ濃度でこの突然変異抑制効果を達成できました。これは患者にとって良いニュースです。DEQが患者の体内での抗生物質耐性獲得を遅らせる能力を評価するための臨床試験が必要です」と付け加えている。
原論文:Yin Zhai, John P. Pribis, SeanW.Dooling, Libertad Garcia-Villada, P.J. Minnick, Jun Xia, Jingjing Liu, Qian Mei, Devon M. Fitzgerald, Christophe Herman, P.J. Hastings, Mauro Costa-Mattioli and Susan M. Rosenberg (2023).Drugging evolution of antibiotic resistance at a regulatory network hub, Science Advances, 9(25) | doi: 10.1126/sciadv.adg0188
(forbes.com 原文)