これらの旅団はその日、保有するものの中で最高の車両を失った。戦車レオパルト2A6を1両、M2ブラッドレー歩兵戦闘車を10数両、そしてレオパルト2R工兵車を3両だ。
フィンランドが供与したレオパルト2Rの損失は、最も注目すべきものだった。失った3両はウクライナ軍が運用する同車両の半分を占めていたからだ。レオパルト2RはフィンランドメーカーのPatriaが地雷を除去し、塹壕を埋め、土手を崩せるよう設計したものだ。
そして地雷原の突破こそが、攻勢をかけているウクライナ軍がこの3週間、ザポリージャ州とドネツク州の南部戦線全域で試みていることだ。ロシア軍の防衛線に大きな突破口を開いてはじめて、ウクライナ軍は新設の第10作戦部隊の大半を投入し、ロシアが占領するウクライナ南部の解放を試みることができる。
そのため、ウクライナの解放を求める人々にとって、一度の試みでレオパルト2Rの半数が失われたことは、今後の反攻に大きな打撃となると映ったかもしれない。
だがレオパルト2Rは、ウクライナ軍が保有する防衛戦突破のための特殊車両のごく一部に過ぎなかった。主にドイツの支援のおかげで、ウクライナ軍は単独またはチームで地雷除去、塹壕の埋め戻し、土手崩しができる数多くの工兵車を運用している。
最も数が多いのは、ドイツのFlensburger Fahrzeugbau Gesellschaftが製造したヴィーゼントだ。ウクライナはドイツから重量45トンの同車両を42両、そしてノルウェーからも不特定数を調達している。
乗員2人のヴィーゼント1は、レオパルト1の車体に1000馬力のディーゼルエンジン、30トンのクレーン、英Pearson Engineering社製の排土板か地雷をかきだすプラウのためのアタッチメントを搭載している。
これは、レオパルト2Rを含む西側諸国の地雷除去車両のほとんどに装備されているPearson社製の地雷プラウと同じものだ。このプラウの最大の特徴は幅にある。「車両の全幅にわたって配置された地面に食い込むプラウの歯が、圧力で爆発する地雷を土中からかき出し、通行可能な経路を作り出す」とPearsonは説明している。
同じプラウを使用しているため、レオパルト2Rとヴィーゼント1の間に大きな違いはない。確かに、レオパルト2Rはヴィーゼント1よりも重量があり、保護性能が高く、エンジンパワーは500馬力上回り、力強い。
だがマラトクマチカの郊外では、これら車両の装甲とエンジンパワーの差は大きな違いを生み出さなかったことは指摘するに値する。地雷の密度がかなりのものであったこと、そしてロシア軍ヘリの介入もあってウクライナ軍の部隊はそこで大きな損失を被った。
3両のレオパルト2Rを失ったとしている6月8日の地雷原突破の試みでウクライナ軍が失ったヴィーゼントは1両のみだ。つまり、ウクライナ軍は2週間前のマラトマチカ南での惨敗を経てなお、地雷原を突破する能力を十分有している。
(forbes.com 原文)