政治

2023.06.19 09:30

ウクライナ、爆破されたダム近くで70年前のロシアT-54戦車を確認

安井克至

Getty Images

ウクライナのドニプロ川流域に約190億リットルの水を放出したカホフカダムのすぐ東に位置するプヤティハートキという町の周辺で、ウクライナ軍の第128独立山岳強襲旅団 は6月6日に何者か(おそらくロシア軍)がダムを爆破してから2週間近くもの間、ロシア軍の防御力を試している。

第128旅団がプヤティハートキ近郊で発見したのは、親ロシア派分離主義者やロシアの予備軍、そしてロシア軍が移動式の短距離砲として使用している古い戦車のT62とT54のようだ。

ロシア軍の戦闘序列は洗練されていない。だが、第128旅団はまだ防衛線を突破していない。同旅団は南部戦線のこの区間で手薄になっているためと思われる。

ウクライナ軍の旅団は6月4日夜に長らく予想されていた反攻作戦を開始した。ウクライナ軍で最も装備が充実している経験豊富な十数の旅団が複数の軸に沿って攻撃中で、少なくともそのうちの1つで大きな成果を上げている。プヤティハートキの東約96キロ、モクリ・ヤリー川に沿って南北に走る軸だ。

それに比べれば、前線の西端はかなり静かだ。第128山岳旅団が探りを入れている。ロシア側の分離主義者と予備軍はその後、60年前のT62や70年前のT54を含む大砲や移動式砲で攻撃している。戦線はほぼ動いていない。

第128旅団も、鹵獲(ろかく)したロシア軍のT62の車体と、これまた鹵獲したロシア軍の歩兵戦闘車BMP-2の砲塔を合体させた即席の戦闘車少なくとも1両を含め、老朽化した兵器を少なからず所有している。

戦況はウクライナ側に有利になっているようだ。13日間の戦闘で、第128旅団と支援する偵察部隊は元々いた地点から数キロ南へ前進したようだ。

ウクライナ軍が6月10日に仕かけた攻撃にはほんのひと握りの戦車と戦闘車両が従事したと報じられている。あるロシア人ブロガーによると、ロシア軍の砲撃はウクライナ軍を撃退したが、ウクライナ軍はその間、近くのロブコベ集落からプヤティハートキに入るルートを確保したという。そのブロガーは「戦闘が繰り広げられている」と書いた。

現在のところ、展開されているのはほとんど砲撃戦だ。「ウクライナ軍は現在、ロシア軍の砲撃を抑制して仲間の部隊を通過させようと砲撃戦に注力している」とブロガーは説明。「ロシア軍側ではT62とT54も即席の自走砲として活発に動いている」とも指摘した。

「歩兵らは自走砲の乗員の貢献を大いに称賛している」という。

しかし、わずか約16キロほど先の標的を正確に砲撃できないこれらの古い戦車は、第128旅団の火力支援を行うウクライナ第44砲兵旅団によってほぼ確実に劣勢に立たされている。第44旅団が保有する中で最も優れた砲である米国製の榴弾砲M777はGPSで誘導される砲弾を約24キロ先まで飛ばせる。旧ソ連製の大砲2A36の射程はM777より数キロ長い。だが精度は低い。

ウクライナ軍の山岳旅団がどこまで、どれだけ早く前進できるかは、プヤティハートキ周辺での砲撃戦の結果に大きく左右される。T62やT54を鹵獲したという報道を相次いで目にしたら、それはおそらく第128旅団が防衛線を突破したことを意味する。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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