経営・戦略

2023.06.28 10:00

中小企業の「人的資本経営」を因数分解 社員の幸せは、会社の成長に

「3カ年決算」で経営の狙いと実態を共有 


ウエダ本社(京都市)では、「働く環境の総合商社」と銘打つとおり、商材卸からオフィスの企画、クライアントと共創したコンセプトメイクなど様々な時間軸のプロジェクトを実施しています。 

そのため、引合いから営業・受注までに数年を要する足の長いプロジェクトも取り扱うことも多く、単年度で見ると売上・利益の数字が事業活動の実態を表しきれず、経営状況が決算書に正しく反映されない状況になっているケースが存在していました。 

こういった状況を変えるために、同社では、3年という単位で「1期」として捉える「3カ年決算」という考え方で会社の経営状況や今後の戦略を自社の取引先とも共有しています。

本取組で、通常の財務諸表の期にとらわれ、自社の経営評価を「昨対」ばかりに注目してしまい、経営の視野が短期的になってしまうことを防ぐことにもつながり、また、自社と中長期的に付き合う協力企業や顧客に正しく情報を届けることによる安心感・信頼関係を培うための手法の一つともなっています。

ウエダ本社 子連れ出勤を推進 


ウエダ本社(京都市)の100%子会社として、多様なライフイベントと共に生きる女性に “はたらく”と“いきる”がつながる選択肢を提供することで、しなやかで彩り豊かな社会の実現に貢献することを目指しているのが、2016年に設立された「utena works」(京都市)です。 

ある社員さんが、急な子供の発熱時にどうしても看護してくれる人がいない中、職場に連れてきたことがきっかけではじまった「子連れ出勤」。子どもの近くで安心して仕事ができる働き方として京都府なども注目しはじめています。 

また、会社としても社内に子どもがいる風景を社員が自然に受け入れるようになり、職場全体の明るさが増したとのこと。時間や場所に縛られない働き方ができる体制づくりにより、育児や介護などの事情を抱えた社員でも生活に合わせて働ける柔軟性を高めた結果、人材の定着にもつながっています。 現在は、ウエダ本社の事業部となり、同社とより一体となった事業の推進を志向しています。

全社員でコアバリューの発掘した友安製作所


友安製作所(大阪府八尾市)は、2004年の現社長の入社を契機に次々と新規事業を展開しています。

 2013年頃に一旦売上の踊り場に立った際に、会社の価値軸を「3つのコアバリュー・ミッション・ビジョン」として設定しました。更なる事業拡大に伴って社員も増える一方、「バリューは社長が決めたモノ」と社員にとって自分事化されていない状態に陥ってしまいました。

この状況を打破すべく、試行的に小グループでミーティングを重ねた結果、2021年に会社を1日休業し社員全員が参加する「全体ワークショップ」を実施することになりました。

このワークショップでは、執行役員のファシリテーションのもと、社長が会社の沿革を振り返りながら、全社員の価値観や気持ちを4時間かけて何百枚もの付箋に書き出した。最終的には「Tomoyasu way of life」という10個のコアバリューを社員と共につくりあげるとともに、それに基づく人事評価制度も構築するに至りました。 
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構成・編集=椿ことね、督あかり

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