『Forbes JAPAN 2023年4月号』では、規模は小さいけれど偉大な企業「スモール・ジャイアンツ」を特集。「スモール・ジャイアンツ」は、Forbes JAPANが2018年から続けてきた名物企画のひとつで、会社の規模は小さくても、世界を変える可能性を秘めた企業をアワードというかたちで発掘し、応援するプロジェクトだ。
SMALL GIANTS AWARD Exective Producerを務める内田研一が、日本の中小企業が世界へと羽ばたく際の勝ち筋について語った。
中小企業の「あるある話」のひとつに、社長がいつも「優秀な営業マンが欲しい」とぼやいているというのがあります。営業が得意なのは社長ひとり、という会社が多いからです。
では、技術が売りの中小企業から出発したパナソニックとソニーは、なぜ大きくなれたのでしょうか。それは販売会社(販社)をつくって「売る仕組み」を構築したからです。中小企業が販社をつくるのは難しいかもしれませんが、売る仕組みをつくるという点においては大きなヒントがあります。
今回の受賞企業である竹中製作所やオータマは顧客が向こうからやってくる仕組みをつくりました。
圧倒的な技術と商品力を求めて顧客が集まるわけですが、竹中製作所は海外にも販社をつくって支持を得ている。オータマは研究者や技術者などの「プロ」が支持をして、プロのほうからやってくる「研究開発型企業」です。共同研究のパートナーが集まることでネットワークが拡張されるパターンといえるでしょう。
シーパーツは「売ること」を先鋭化させています。解体して販売する会社はほかにもありますが、早くからDXで独自の売る仕組みを特化させました。
そしてグランプリに輝いた筑水キャニコムの特徴は、デジタルの時代に現場に足を運ぶことで本物の情報の大切さを利益につなげていること。いまの時代に評価する理由としてこの点が非常に大きいです。
顧客に直接会ってニーズを掘り起こすことは、顧客以外の人との出会いもあり、そこでの「偶然」が新しいものを生む。工場や社内の雰囲気にこそ、実は重要な付帯情報があり、アイデアのヒントが多く隠されているわけです。
また、今回の受賞者に共通するのは、「人がやらないことをやる」という点です。誰もやらないからこそ、独自に技術を磨き、高い専門性を身につけなければならない分野です。
環境機器、環境大善は、どれも人がやらない、むしろ嫌がることをビジネスに転化させました。それだけでなく難題の解決や地域住民の雇用といった利益以上の副産物といえる幸福感まで与えている。日本の企業の世界での真のプレゼンスはこの点にあります。
海外企業との大きな違いは、雇用が安定しているため、従業員が成功報酬を求めたり人を出し抜いたりせずに、コツコツと仕事ができる環境にある点です。その特性に適しているのが中小企業に多い製造業なのです。この仕事への姿勢が社内のコアコンピタンスとなり、経営の核になる競争力の源泉になっています。