中小企業の「あるある問題」を幸福に変える方法

内田研一

今後、大変化の時代が来れば、アメリカや中国の企業は小回りや融通が利かなくなるでしょう。それに、システムを定型化させているからイノベーションは生まれにくい。例えばものづくりをしていくと、繰り返し作業することでデータが蓄積されていきます。

研究者たちは毎日そのデータを見て、数字以外のものも感じている。単に数字をエクセルに残しておけば、後継者がそれを受け継げるかといえば、それは違います。現場で見てきた肌感覚から生まれる直感だったり、仮説をつくる力だったり、目のつけどころといった暗黙知こそ継承しなければならない。

8割まではまねできても、残りの2割ができない。その蓄積こそがコアコンピタンスの正体で、どうしても、それは属人的な部分となる。ここが強みであり、今回の受賞企業もこうしたナレッジを武器にしています。だから、世界で成功しているわけです。

製造業だけでなく、サービス業でもホテル業でも観光業でも同じことが言えます。ファストフード店のようにマニュアル通りにやれば、90%はできるでしょう。ただそこから「カイゼン」や改革は出てこない。極言すれば、ジョブ型雇用も同じでイノベーションは生まれにくくなります。

では、これからの日本の中小企業はどうしたらよいか。「カネだけ、いまだけ、自分だけ」をとりあえず横に置くことです。自分だけ稼げばいいという人たちが社内にいたとしても当然うまくいかない。でもチームできちんと成果を出せば、高く評価されます。いまの時代に強く求められているのは、実はモラルなのです。

「世のため、人のため、自分のため」。これが一貫している人たちこそが、幸せにできる人を増やせる。スモール・ジャイアンツにはそんな経営者が多いと思います。


うちだ・けんいち◎SMALL GIANTS AWARD Executive Producer /やまなし産業支援 中小企業経営革新サポート事業 統括マネージャー。経産省地域活性化支援事務局ジェネラルマネージャー、波力発電ベンチャーのファウンダーなどを経て、19年より微細加工工業会事務局長も務める。

この記事は 「Forbes JAPAN 特集◎スモール・ジャイアンツ/日本発ディープテック50社」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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