製造大手が失敗した新システム導入 「チェンジマネジメント」の落とし穴

panuwat phimpha / Shutterstock.com

組織を「現状」から「目指す状態」へと移行させ、期待するベネフィットを達成するための変革推進手法である「チェンジマネジメント」。この対応がいま、より重要性を増しています。日本チェンジマネジメント協会によると、チェンジマネジメントを行った場合と行わない場合では、図1のとおり効果に差がでると述べています。 
図1.チェンジマネジメントの効果(日本チェンジマネジメント協会)

図1.チェンジマネジメントの効果(日本チェンジマネジメント協会)


DXなどの流れで、すでに取り組んでいる企業も多いでしょう。しかしチェンジマネジメントにはさまざまな落とし穴があります。今回は失敗事例から、チェンジマネジメントを行ううえでのポイントを学んでいきたいと思います。

失敗事例1:新システム運用が掛け声のみ(食品メーカーA社)


A社では、売り上げの拡大を目指して、既存顧客のニーズ深堀りと現在の営業活動の見直しを実施していくことを決めました。そこで営業管理システムを初めて導入することにしました。
 
全営業員に向けて行われた説明会で、営業本部長は「営業活動や顧客動向をシステム上で見える化し、組織的に営業活動を見直して、売り上げ拡大に向けた変革を行っていく」と声高に宣言し、システム運用は始まりました。
 
しかし運用が始まってから半年後、活用状況を見てみると一部の営業員しか使用していなかったのです。利用していない人にその理由を聞いてみると、営業本部長自身が、出席している会議でExcelの資料を作成し、報告を行っているからとのことでした。つまり、営業本部長がシステムを使用した変革を進めようとしないので、その下の管理職も全員がシステムを使用せず、結果、当初の目的である営業組織全体の変革は一部の変革に留まってしまったのです。

解決策:ロードマップを作成する


チェンジマネジメントにおける組織幹部の役割は、変革を後押しすることです。組織全体のメッセージ(変革の目的、あるべき姿など)を示すことはもちろんのこと、組織幹部自身が変革を進めている姿を見せることも重要です。
 
そこで必要になるのが「スポンサー(幹部)ロードマップ」の作成です。これは「いつまでに誰に対して何をしてもらうか」を具体的に記載したもので、今回であれば、新システムの運用が始まるまでに、営業メンバーに「最低限この機能を使えるようにしておいてほしい」と依頼する必要がありました。
 
ちなみに、もし組織上ではスポンサーになる人が、変革を進める上での抵抗勢力になりうる場合は、その上位職や影響を与えられる人にスポンサーを担っていただくことも考慮しましょう。
次ページ > 失敗事例2:外部人材まかせで現場から反発

文=INDUSTRIAL-X・中村祥子 編集=露原直人

ForbesBrandVoice

人気記事