宇宙

2023.06.21 14:00

「暗黒宇宙」解明に挑む、欧州の宇宙望遠鏡ユークリッド

最大の技術的課題

ダークエネルギーの研究は本質的に統計的であるとローズはいう。その形状や距離にわずかでも系統的なずれがあれば、結果に偏りが出る。一連の測定に地球大気の外にある宇宙望遠鏡を使おうと考えた理由がそれだ。

ユークリッドが現在の測定値の誤差範囲を縮め、宇宙膨張を加速しているとされている広範囲の潜在的原因を排除することが期待される。さまざまな可能性を排除することで、ダークエネルギーの物理的原因の解明に近づくことができるとロードは指摘する。

ユークリッドにとって最も重要な測定は、二段階に分かれる。まず、探査機はさまざまな銀河がダークマターによってどんな影響を受けているかを測定し、次にそれらの測定値を使ってダークエネルギーの特性を詳しく解明する。

銀河の形状から、それがダークマターによって少し歪められているかどうかがわかる、とオランダ、ESA ESTECのユークリッドプロジェクト研究員ルネ・ローライスはいう。さらに、ダークマターの分布から、膨張の加速を導くことができるという。

科学界における銀河のクラスタリングに関する理解は、宇宙におけるダークエネルギーの中身を特定できるところまで進んでいるとオスロ大学の理論物理学者で、ユークリッド科学コンソーシアムのメンバーであるハンズ・ウィンサーはいう。このため、Ia型超新星までの距離測定とは別に、宇宙が加速していることを示す膨大な証拠を得られたとのことだ。

ダークエネルギーが宇宙の大規模構造に与える影響とは

宇宙の大規模構造を研究することで、ダークエネルギーが何であるかを理解しようとしている。構造の成り立ちを調べると、注目すべきことは重要なのは物質が引きつける力である引力および宇宙の膨張の2つであり、基本的に両者間のせめぎ合いだとウインサーはいう。

1917年、ビッグバン理論と宇宙膨張に関する観測に基づく理解がなされる前に、アインシュタインは一時的に、いわゆる宇宙定数(斥力)を自身の一般相対性理論に取り入れた。それにより彼は、通常の物質に対する重力の影響を相殺して、静的宇宙理論を支持した。アインシュタインは、後にハッブル膨張として知られる宇宙膨張の観測証拠が見つかると、自身の場の方程式からただちにこの部分を削除した。
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翻訳=高橋信夫

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