その一例が、SNSを通じて消費者に直接プロダクトやサービスを販売するプラットフォームを展開する香港のSleekFlow(スリークフロー)だ。同社の創業者兼CEOのヘンソン・ツァイは、すべての取引に低価格で使いやすいエアーウォレックスのソリューションを使用していると語った。
リウは、エアーウォレックスのインフラがまねしにくいものだというが、それでも同社は、21年の取引額が6400億ドルを超える大手のストライプや、年間取引高が2億ドルのインドネシアの決済ゲートウェイ企業Xendit(センディット)、年間決済額900億ドル達成を目指すインドのRazorpay(レイザーペイ)といったアジア太平洋地域の競合との戦いに直面している。エアーウォレックスの年間取引額は500億ドルとされる。
デロイト・ファイナンシャル・アドバイザリーは、世界のデジタル決済市場の成長率が、20年から26年にかけて年率13%で成長し、11兆3000億ドルに達すると試算しているが、競争の激化によって業界の統合が進むと予想している。報道によると、ストライプは18年に16億豪ドルでエアーウォレックスに買収を打診したとされる。フォーブス・アジアの取材に対し、エアーウォレックスはこの件に関するコメントを拒否したものの、「早ければ24年にもIPO(新規株式公開)を検討している」と明かす。
エアーウォレックスは、2年近くをかけて独自の資金移動インフラの基盤を構築し、その間に総額9億ドル以上を調達した。同社は世界19の拠点で1300人以上を雇用しており、調達した資金の大部分は今後の人員拡大に充てる予定だ。リウは多くのテック企業が雇用を削減する中で、社員を増やそうとしている。
「現状で1300人の当社の従業員数は多いように見えるかもしれませんが、事業規模から考えると実際にはまだかなりスリムなチームです」(リウ)