他の3人の創業者がテクノロジーに深い知見をもつのに対し、リウの強みは、CICCで勤務していた当時に築いた投資家のネットワークにある。エアーウォレックスの初期投資家の1社で、香港に拠点を置くベンチャー投資会社「ゴビ・パートナーズ」のタン・チーボーは、リウがエアーウォレックスのオペレーションと企業文化を統括することで、「個性豊かなメンバーをつなぎ合わせた」と語る。
リウの「違いを乗り越えていく力」のルーツは、彼女の生い立ちにあるのかもしれない。中国で教師の母と起業家の父との間に生まれた彼女は、12歳でニュージーランドに移住し、その後、豪メルボルン大学に進学。12年に金融学の修士号を取得した。
自身が起業家を志すきっかけになった人物として父親を挙げるリウは、このように話す。
「父のキャリアは浮き沈みが激しいものでした。だから、私は父の影響を受けて、とても適応力が高い人間になったのだと思います」
エアーウォレックス◎2015年創業、香港と、豪メルボルンに本社を置くデジタル決済企業。メルボルン市内でカフェを営んでいたジャック・チャンとマックス・リーが、メルボルン大学時代の友人のルーシー・リウ、ダイ・シージンと立ち上げたJD.comやカンタス航空を含む、4万社以上の顧客を抱えており、22年10月には4億ドルを調達している。
ルーシー・リウ◎豪デジタル決済企業「エアーウォレックス」共同創業者兼会長。中国の投資銀行「中国国際金融(CICC)」の投資顧問を経てエアーウォレックスを立ち上げた。豪州最大級の起業家コミュニティ「スタートアップビクトリア」や、メルボルン大学の「スタートアップ・アクセラレータープログラム」でアドバイザーも務めている。