家畜が発する温室効果ガスの影響など、環境に与える害にも目を背けずに向き合ってきた。特に海外の客人の中には、宗教上や健康上の理由、また環境保護活動の意味合いから、ベジタリアンやヴィーガンを主義とする人も多い。そうした対応を含め、5年ほど前からプラントベースミートの開発に着手。
なかでも恵比寿にあるハンバーガー専門店「BLACOWS」で、オルタナティブバーガーという方向で、プラントベースのハンバーガーを作ることにフォーカスした。
無添加のハンバーガーパティを
研究のためにさまざまな商品を試すにつれ、市場に出回っているプラントベースミートには、添加物が非常に多く含まれていることがわかった。「これでは、環境によくても体には悪い。本末転倒です」とヤザワミートグループの統括総料理長・福島 亮氏は感じたという。「なんとか、無添加のハンバーガーパティが作れないものかと、あれこれ試したのですが、手詰まりになってしまいました。大豆ミートを結着材を使わずにパティとして成形するには、小麦粉や片栗粉のようなものを使うしかなく、それでは大豆ミートの水分と粉が合わさり、べたべたした仕上がりになってしまうんです」
そんなとき、食の展示会で「ディーツフードプランニング」の“ディーツ”という食材に出会う。それは、おからとコンニャク粉を混ぜて結着させたものだという。加えているのは、水と、こんにゃくを固める際に使う水酸化カルシウムのみ。つまり、安心安全な食材といえる。
ディーツの原体と呼ばれる加工前のものは、一見豆腐のようでもあるが、豆腐と違って、しっかりした弾力がある。水分を保持しやすく、無味無臭のため、肉や魚介類など、いかような味や形、食感にも変化できる可能性を持つ食材なのだという。
福島氏は、これがパティ作りを助けてくれると直感した。さっそく大豆ミートと合わせてパティの製造に取り組んだ。
そもそもの大豆ミートとは、大豆の油脂分を抽出した、いわば、搾りかすを粉砕したもの。しかし多くの製品が油脂分を抽出するときに、化学的な溶剤を使うため、それが体に残留する可能性がある。
また、大豆もアメリカ産、カナダ産、中国産など各種あり、遺伝子組み換えのものも少なくない。ヤザワミートでは、何十種類の大豆ミートを食べ比べ、北海道で製造されている国産大豆を圧搾法で油を分離させた大豆ミートを使用することにした。