開発した2台の可搬型光格子時計
2019年3月28日から4月5日にかけて、可搬型光格子時計を東京スカイツリーの地上階と高さ450メートルの展望台2か所に設置し計測したところ、展望台の時計は1日当たり約4ナノ(ナノは10億分の1)秒速く進んでおり、一般相対性理論の予測通りの結果が得られた。2台の時間のずれを標高差に換算すると約452.6メートルとなり、国土地理院が測量した展望台の高さともほぼ一致した。
世界最高精度の可搬型光格子時計の開発、その時計を用いた実験室外の公共の場での測定は、いずれも世界で初めての試みで、光格子時計の実用化へ大きな一歩となった。
東京スカイツリーでの一般相対論検証実験
また、周囲より比重の高い鉱脈などが地下にあると、地上で感ずる重力が強くなるので時間の進みがゆっくりになる。それを検出できる小型の光格子時計が実現すれば、地下資源の探索も可能になるだろう。今回の成果を足掛かりに、光格子時計の小型化・可搬化を目指した技術開発がなおいっそう進むと期待される。
※本稿は、国立研究開発法人科学技術振興機構のポータルサイト上の記事「相対論の検証から地下資源の探索まで:光格子時計が時計の概念を変える」からの転載である。
香取秀俊◎東京大学 大学院工学系研究科 物理工学専攻教授、理化学研究所 主任研究員・チームリーダー。
『さきがけ』:光と制御「シュタルク・アトムチップによるコ ヒーレント原子操作」(2002-2005/研究員)
『CREST』:量子情報処理システムの実現を目指した新技術の創出「極低温原子を用いる量子計測法の開拓」(2005-2010/研究代表者)
『ERATO』:「香取創造時空間プロジェクト」(2010-2016/研究総括)
『未来社会創造事業』:通信・タイムビジネスの市場獲得等につながる超高精度時間計測(2018-)
の4つのプログラムに参加している。