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2023.06.07

京大准教授が求める「共創時間時計」は水星人との待ち合わせに使えるか

Getty Images(写真はイメージ)

古来、暦や時間は太陽がつくりだす光と影にルーツを持つことが多い。1日24時間、1年365日でおよそ太陽が地球からみて再び元の位置で観測できる周期性が原点となるが、だとすれば太陽との距離や位置が異なる別の惑星には別の時間があるのではないか。たとえば地球よりも太陽に近い水星は公転周期が約88日、自転が約59日なので、太陽が水星の空にもう一度同じように顔を出すには太陽のまわりを二周、すなわち地球でいうところの2年の歳月がかかることになる。

となると、水星人と地球人とが「また明日ね」と言って別れてしまうと、次に会おうとしても地球人は相当な待ちぼうけを食うはめになる。異なる時間をもつ二人が何かを一緒にする、ということはかなり難しい。

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タイミングはどうすればあわせられるか?

「明日、午前10時に改札前で集合」。友人や恋人との何気ない日々の待ち合わせにも欠かせないのが同じ時間を刻む「時計」という道具の存在である。機械式時計を見る機会も少なくなり、時計が狂ったことを遅刻の言い訳にもしにくい時代になってきた。

もちろん、同じ時計をもっているはずなのに、きまって10分遅れてくる人もいれば、悪びれもせず右手に温かい珈琲をもって集合場所に集まる人もいないではないが、それでも同じ「午前10時」を目指したことに変わりはない。

他方、自分たちの内面にはまったく別の時間が流れていることに、わたしたちはうすうす気づいている。腹時計は18時に鐘を鳴らすのではなくお腹が空いたときに鳴り、あくびもまた23時のような決まった時間ではなく眠気を感じたときに報せをよこす。この「時間」は明らかに人ごとに異なり、腹時計や眠気が他の誰かと自然に合うことはめったにない。

何かに悩むときに必要な時間も、じっくり考えを深めるのに必要な時間も、ぱっと視界がひらけたような閃きに出会うタイミングも、他人とはまったく違う自分だけの内なる時間の中で自分だけの進み方で決まっている。

熟達したファシリテータは「観察」する

定食屋や居酒屋で着席したとき、「お決まりのころにご注文をうかがいにきます」という声かけへの違和感は、そんなことはできるはずがないという猜疑心から生まれる。しかし、本当に「お決まりのころ」にやってくる察しのいい店員さんに出会うことがある。なぜその店員さんはそのタイミングを察知することができたのか。

その店員さんが他の来店者をつぶさに「観察」していることにヒントがある。来店者が注文を考えているときには、席に座った皆でメニューを囲んで共同注視している。あぁでもない、こうでもないといいながらも、家族の一人があたりをキョロキョロしはじめる。めいめい話しはじめたり、スマートフォンに目を落としたりする人も出てくる。メニューのなかから注文内容を選んでいるときとは行動が変わりはじめていた。これが「お決まりのころ」を店員に教えた兆しの一つである。

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文=塩瀬隆之 編集=石井節子

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