北朝鮮が発信する情報を分析する場合、反応速度と主体、オーディエンスが重要になる。談話は、岸田文雄首相が27日に示した日朝高位級協議を行う意向を受けて発表された。週末をはさんだことも考えると、かなり速い反応だ。主体も、北朝鮮ではまず、外務省・日本研究所の研究員(実態は北朝鮮外務省の審議官・課長クラス)に語らせるパターンが多いなか、いきなり外務次官に語らせている。誰に向かって語っている内容なのか、ということも重要だが、談話は末尾で「日本は言葉でなく、実践行動で問題解決の意志を示すべきである」と結んでいるから、明らかに日本政府に呼びかけた談話と解釈できる。
北朝鮮が、日本を罵倒せず、対話に関心を示したのは、日本人拉致被害者等の再調査を約束したストックホルム合意が2015年に破綻して以来、ほぼ8年ぶりになる。
ただ、北朝鮮が心を入れ替えたわけではない。談話は「既に全て解決した(日本人)拉致問題」と表現した。談話は「もし、日本が(中略)新たな決断を下し、関係改善の活路を模索しようとするなら、朝日両国が互いに会えない理由はない」としている。これは、「拉致問題を解決済みと認めるのなら、対話に応じて良い」と読み解ける。
では、なぜ今、日本に接近しているのか。北朝鮮は29日未明、海上保安庁に対して31日から6月11日までの間に人工衛星搭載のロケットを発射する予定のため、海上に危険区域を設定すると通告した。韓国政府によれば、北朝鮮が日本に通告したのは、日本が国際海事機関(IMO)の地域別航行区域調整国だからだという。北朝鮮はIMOにも通報した模様だが、韓国には個別に説明を行っていない。北朝鮮は4月から南北間の定時通話に応じなくなってもいる。