そのInsta360は、3月、スマホ用ジンバル「Flow」を発売し、すでに進化を終えた(?)と思われたアイテムに、新鮮な驚きと可能性を与えた。同社を率いる、劉靖康(JK Liu)は「ジンバルは決してユーザーのニーズを満たしてはいなかった」と言う。
劉は、2014年にハイテクベンチャー「Shenzhen Arashi Vision(シンセン・アラシ・ビジョン)」を深圳で創業して以来、プロ向けVRカメラ、コンシューマー向け360度カメラ、アクションカメラなど、革新的な製品を相次いで発表してきた。現在、同社の製品名「Insta360」を社名とし、世界200以上の国や地域で販売されるにまで成長。劉のモノづくりには、他社とは違う視点・発想を感じさせる。彼の起業のきっかけから製品開発の発想法、今後の目標まで話を聞いた。
スタートはアクションカメラではない
Forbes JAPAN(以下、F):大学在学中の2014年に起業されましたが、起業のきっかけを教えてください。劉靖康(以下、JK):起業は「3つ」のことが実現できます。まず1つは、お金を稼ぐこと。2つめは、自分の好きなことが自由にできる。3つめには社会貢献ができる。だから普通の会社員になるよりも起業家になるほうが面白い。そう考えたのです。
F:自分の好きなこと、それがアクションカメラにつながるのですね。この当時から360度撮影・編集のアイデアがあって起業したのですか。
JK:大学の専業はソフトウエア開発でした。きっかけは学園のコンサートやイベントに関わったことですね。どうすればイベントの雰囲気をそのまま記録できるのか。一眼レフなどの撮影は、風景を画角の中で平面的に記録します。そうではないやり方が無いかと探していた時に、たまたま海外のサイトで360度の撮影が可能なカメラを目にしたのです。こういうカメラを使うと、臨場感をそのまま伝えることができるのでは、と思って開発しました。
F:360度撮ったものを後から編集できるという機能は当時注目されました。2018年頃に、スケボーでジャンプしている人に向かってカメラを「投げて撮る」という(ONE Xシリーズの)プロモーションがありましたが、それを見た時は、360度カメラの可能性を強く感じました。
JK:私たちの最初の製品は360度の全天球ではありましたがアクションカメラではなかったんです。スポーツをするユーザーの利用が増えていくに従って、今の形に進化しました。ユーザーがカメラを使いたくなるのは、記録したものを自分の好きな角度で編集して、平面の素材として取り出して、それをソーシャルメディアで簡単にシェアできるからなんです。この点に特化して開発していきました。