経営・戦略

2023.05.30 11:00

「この10年で最も衝撃を受けた人」 13代中川政七が語る岩本涼の魅力

僕らは、まず日本の市場があって、その先に海外の市場があると思ってしまうけれど、岩本さんはあたりまえのように日本も含めた"世界"として捉えています。中川政七商店がこれから世界に出ることを考えると、そういう感覚を持った人がいることは大切です。

岩本さんには、僕たちに率直に思っていることを言ってもらえればいいなと思っています。

——岩本さんはご自身の世代の特徴をどのように捉えていますか。

岩本:私たちの世代は「失われた30年」の間に生まれ、「このまま日本は衰退し沈没してしまうのではないか」という危機感のなかで育ちました。ですが、それでも日本の力を信じて、伝統的な文化や思想にリスペクトを持ち、そのうえで世界に出ていきたい、と考えている若い人たちはたくさんいます。

そして、そうした時代を変えていこうとするエネルギーを持った若者たちは今、お茶や工芸に触れ始めています。私はそこに次の大きなマーケットが生まれるポテンシャルを感じています。だからこそ、新しい世代への訴求と同時に、グローバルへの訴求にも、息をするように取り組んでいるのです。

「抹茶ラテ」が入り口に?

——TeaRoomは「対立のない優しい世界を目指してお茶で、日本文化の価値を世界へ証明する 」を企業理念に掲げています。具体的にはどのようにアプローチしていますか。

岩本:私は、お茶や文化によって世界の対立を無くす構造を、社会に浸透させるためにTeaRoomを設立しました。そういう意味で、TeaRoomは社会に変化を起こすアウトカムの会社なんです。

我々は茶葉を販売するだけでなく、例えば茶葉がほぼ入っておらず、95%砂糖で構成されている「抹茶ラテ」の原料であっても、喜んで供給しています。それは、世界のどこかで抹茶ラテを飲んだ人が「抹茶」という言葉に興味を持ち、ネットで検索して「抹茶は日本から来たものだ」と認識してくれる可能性があるからです。

実際、そういった小さなきっかけから茶道や茶道具などの周辺分野に興味を持ち始める人も少なくありません。“形から入る”とはよく言いますが、実際に、物を持ったり身に着けたりすることで、その人の佇まいや行動に変化が起き、思想すら変わっていくのです。

なので、例え「抹茶ラテ」が入り口でも、それが人々の思想が変わるきっかけを提供できるのではないかと考えています。
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文=久野照美 取材・編集=田中友梨 撮影=山田大輔 場所提供:三菱地所株式会社

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