英国民保健サービス(NHS)では、糖尿病患者は危険な合併症の兆候を発見するために、血液検査や尿検査、視力検査や下肢の検査など、毎年8項目の検査を行うことになっている。
糖尿病の撲滅を目指す慈善団体ディアベテスUKの報告によると、糖尿病患者のうち、2021~22年にNHSが提供した定期検査を受けたのは47%と、全体の半数に満たなかった。地域によっては、その数値が10%程度にとどまったところもある。貧しい地域では、検査を受けられなかった患者の割合が最も高い傾向にあった。全体として、新型コロナウイルスの流行前の年に比べ、すべての検査を受けた患者は約30万人減少した。同期間の糖尿病患者の死者数は約7000人で、感染症流行前に比べて13%増加した。
ディアベテスUKのクリス・アスキュー最高経営責任者(CEO)は、糖尿病は「容赦ない」とした上で、同疾患とともに生きる人々は「医療専門家の緊密な支援と監視を必要とする」と説明。定期的なケアによって「命を救うことができる」とし、下肢切断や脳卒中、心臓病などの「重大な合併症」の予防に役立つとした。「それにもかかわらず、あまりにも多くの糖尿病患者が、この困難で致命的な症状を自分1人で管理することになった」と指摘した。
NHSの広報担当者は英BBCに次のように語った。「NHSの8つの糖尿病ケアプロセスをすべて受けている人の割合は、新型コロナウイルス流行前の水準に向けて改善を続けてはいるものの、まだやるべきことがあることはわかっている」
ディアベテスUKは政府に対し、糖尿病診療の待ち時間の短縮や健康格差への取り組み、2型糖尿病予防への取り組みの改善など、同疾患に新たな焦点を当てるよう要請。また、地方自治体はこうした取り組みを今後数年間の計画に含めるべきだとした。
糖尿病とは
英国では、糖尿病患者の約9割が2型糖尿病で、血液中の糖分を体内の他の細胞に移動させる重要なホルモンであるインスリンに対して体が耐性を持つようになる。2型糖尿病患者の中には、食事を制限することで治療できる場合もある。食事制限では不十分な場合、インスリンに対する感受性を向上させるために薬を服用し、場合によってはインスリンを追加で注射する患者もいる。1型糖尿病は若い人に多いが、何歳でも発症する可能性があり、インスリンが自ら十分に分泌されなくなることで発症する。生存するためにインスリンを注射しなければならない。英国では糖尿病患者の約8%が1型だ。さらに、それ以外の珍しい型もある。
血糖値の監視や食事中の炭水化物量の計測、活動量の把握、インスリン投与量の調整などは、糖尿病患者にとって日常生活の中で当たり前に行われていることだ。血糖値が高い状態が長く続くと、心臓病や眼病、腎臓病などの合併症のリスクが高まる。
(forbes.com 原文)