ヒューマログとヒューマリンは同社のインスリンで最も売れている製品で、いずれも現在は月額数百ドルかかる。たとえばヒューマログの場合、ペン型注射器のカートリッジ5回分で530ドル(約7万2000円)、10ミリリットル入り1瓶で274ドル(約3万7000円)する。値下げは2023年10〜12月期に実施する予定だ。
イーライリリーはさらに、ノーブランドのインスリン製剤「リスプロ」についても5月1日から価格を1瓶82ドル(約1万1000円)から25ドル(約3400円)に引き下げることや、フランスのサノフィのインスリン製剤「ランタス」のバイオ後続薬である「レズボグラー」を4月に発売することも明らかにした。レズボグラーの価格はカートリッジ5回分で92ドル(約1万2500円)と、ランタスより78%安くなる。
同社はこのほか、現行の患者補助プログラムを大幅に拡充し、民間の医療保険に加入している患者や保険に入っていない患者を対象に自己負担額の上限を月額35ドル(約4800円)に抑える方針も明らかにした。
米国ではインスリン価格の高騰を受けて、州や連邦政府が患者の自己負担額に上限を設ける法的措置を相次いで打ち出していた。昨年成立したインフレ抑制法でも、高齢者向け公的医療保険「メディケア」の加入者を対象に、インスリンの自己負担額の上限を月額35ドルにすることが盛り込まれた。ジョー・バイデン大統領は先月の一般教書演説で、対象者を民間保険の加入者にも拡大することを議会に求めた。
米国では2010年代にインスリンの定価が大幅に引き上げられ、年値上げ幅は2桁に達する年もあった。製薬会社側はこれまで、薬剤給付管理会社(PBM)に支払うリベートを理由に値上げを正当化してきた。定価に相当する卸購入価格(WAC)に占めるPBMの取り分は大きくなる一方だとされる。
保険適用時の医療費の自己負担分は定価に基づいて計算されるため、定価は患者にとって重要だ。保険に入っている患者の場合、年間免責金額(この額まで自己負担で医療費を支払わないと保険が適用されないと決められている額)を満たすまでは、定価を全額負担しなくてはいけない。もちろん、定価の引き上げで最も大きな影響を受けているのは保険に入ってない患者だ。
インスリンの自己負担額は現在、民間保険の加入者でも年間750ドル(約10万2000円)超にのぼり、保険に入っていない患者ではその2倍以上に膨らむ。