この研究では、一部の人をやせやすくしている遺伝子を特定した。この遺伝子を持っている人は持っていない人と比べて、体重が大幅に増えるリスクが低く、健康を維持しやすいという。
体重にはもちろん生活習慣なども影響を与えるわけだが、今回の研究からは、体重の管理ではこれまで考えられていた以上に遺伝的性質が果たす役割が大きいことが示唆される。
「やせ遺伝子」が代謝をコントロール
スペインのIMDEA食品研究所のララ・フェルナンデスらのチームは、健康な790人あまりを調査。その結果、ヨーロッパ人の6割近く(57%)が、肥満リスクを下げるいわゆる「やせ遺伝子」を持っていることがわかった。「FNIP2」という遺伝子には「Cアレル」と「Tアレル」という対立遺伝子があり、前者がやせ遺伝子のバリアントにあたる。
研究では、CアレルかTアレルかと、BMI(体格指数)の低さや代謝率の高さとの間に相関関係があることが判明。年齢や性別を調整すると、さらに有意な結果が得られた。
Cアレルのホモ接合体、つまり両親からやせ遺伝子のコピーを受け継いだ人は、Cアレルのコピーが1つしかないヘテロ接合体の人に比べて、脂肪量と筋肉量の比率がより望ましい状態だった。
やせ遺伝子は重要な代謝経路の調節にかかわっており、摂取した食べ物の種類に応じて、脂肪細胞を成長させたり生成したりするよう体に指令している。
米国で肥満は依然として、最も差し迫った公衆衛生上の脅威のひとつである。筋肉量に対して脂肪量の多い人は、インスリン抵抗性といった代謝性合併症、心血管疾患、がんなどの発症リスクが高くなるだけでなく、新型コロナウイルスをはじめ、ウイルス感染にともなう合併症の重症化リスクも上がる。
フェルナンデスらは「肥満は予防できるが、効率的な予防策やツールを考案するには原因と結果について深く理解する必要がある」と指摘している。
遺伝子で運命が決まるわけではないが、今回の研究結果は血中のFNIP2タンパク質の量が重要な代謝マーカーとして役立つ可能性を示唆している。こうした成果をもとに、肥満は将来、やせ遺伝子の注入といった遺伝子治療で治せるようになるかもしれない。
(forbes.com 原文)