欧州

2023.05.26

なぜアムステルダムは、循環経済の先進都市になれたのか?

駐日オランダ王国大使館にて photo by Masato Sezawa

2050年までに100%循環経済への移行を掲げており、2020年4月には英国の経済学者ケイト・ラワース氏が提唱する「ドーナツ経済学」の概念を市の循環経済政策に採用したことでも話題を集めたオランダの首都・アムステルダム。

日本においても循環経済の先進都市として紹介されることが多く、実際に数多くのユニークな循環型スタートアップ企業らが集積するアムステルダムだが、その背景にはどのような要因があるのだろうか?

今回、IDEAS FOR GOOD編集部では現アムステルダム市長のフェムケ・ハルセマ氏、140年以上の歴史を持つアムステルダム市の廃棄物処理会社からのスピンオフとして設立された廃棄物管理会社、ハーベスト・ウェイストのCEO、エバート・リヒテンベルト氏の来日に合わせて、同市における循環経済の取り組みの現状や背景について両氏に話を伺った。

サステナビリティと経済成長は両立できる

2018年7月にアムステルダム初の女性市長として現職に就任したハルセマ氏は、2011年までオランダ下院の議長やオランダ緑の党・Groenlinks(フルンリンクス)の党首など、政界における要職を歴任。国政を引退後は、社会課題に焦点を当てたジャーナリストやフィルムメーカーとして活躍した経歴を持つ。

ハルセマ氏は、一度政治の世界を離れ、なぜ2018年に市長として再び公共分野に戻ってきたのだろうか。

ハルセマ氏「市長という立場を国会議員と簡単に比較することはできません。立場も環境も大きく異なります。都市のために働くことは、政治的理想や政党のために働くこととはまったく別のものです。

私はアムステルダム市民であり、アムステルダムの出身です。アムステルダムを愛している一人の人間として、市長になることはとても合理的なステップでした。それは私が唯一望んでいた行政の役職であり、さもなければよりクリエイティブな立場かフリーランサーとして働いていたかもしれません」

「私が市長になったのは、アムステルダムが自由な街だから。それが唯一の理由です。また、政界を離れたのにもたくさんの理由があります。私は12年にわたり政治に関わってきましたが、サステナビリティに対する責任感に欠けた政治的議論に疲れてしまったのです。

サステナビリティについて公共の場で、または国会の場で議論することはとても難しいと感じています。なぜなら、サステナビリティは経済成長の手段ではなく、いつもその反対として認識されているからです」

フェムケ・ハルセマ氏(アムステルダム市長)photo by Masato Sezawa

「サステナブルな経済とは成長可能な経済であり、反対ではありません。サステナビリティと成長は共存するものなのです。私にとってサステナビリティは常に経済の問題であり、経済構造の問題です。

最も代表的な例をあげましょう。西洋では、おそらく日本でもそうかもしれませんが、労働に対して課税をしています。しかし、それは賢明な方法ではありません、なぜなら私たちは雇用を必要としているからです。雇用は多くの人々に安全をもたらします。一方で、私たちは建物の解体や汚染に対しては課税していません。

私たちは課税のシステムを変える必要があるのです。しかし、私は緑の党のリーダーとしてサステナビリティについて話す責任があり、長らく議会にいましたが、この点について合理的な議論をすることはできませんでした。多くのことが変わったのは、私が離れてからのことです」
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文=IDEAS FOR GOOD Editorial Team

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