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2023.06.03

和菓子をタイで、日本食材を米国で 「変化」がチャンスを生む

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中道:アメリカの商社ではどういうことをやっていたんですか。

岡田:日本から水産品をメインに業務用食材を輸入する仕事をしていました。そこで3年間、アメリカ国内の物流を勉強させてもらいました。

中道:そして2017年にOS International Incを立ち上げられたわけですが、数年後にはコロナ禍に入ります。どうでしたか?

岡田:創業時に、輸入会社と、輸入した商品をレストランに卸す会社と、レストランの3つを立ち上げたのですが、コロナで全てが大打撃を受けました。

コロナの影響がいつまで続くかわからないなかで、レストランは全部手放しました。輸入事業も卸し事業も売上ゼロが続いて従業員の給料を払えない状況になったので、何か策はないか考えて、LAにある日本のコミュニティサイトの掲示板に「日本米あります」と投稿してみたんです。

当時日本米が手に入らなくなるというデマが流れていて、実際売り切れになっていたので、大量の問合せが来ました。それで、これはいけるなと。そこから日本米を買いに来たお客さんに、魚など他にも食材があることを伝えたらどんどん売れ始めて。
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中道:
BtoCみたいな感じで?

岡田:そうです。アメリカの物流は日本企業のような自社完結型は少なくて、専門によって細分化されているので意外と抜け道だったんです。それから事業が回復して従業員の給料も払うことができました。コロナで山をひとつ超えた感じですね。

中道:コロナは大変でしたけど、新しい一歩を踏み出すきっかけになった気がしているんですよね。

岡田:僕も生きていくために思いつくことは全部やりました。周りから「自分もそんなビジネスをやろうと思っていた」と言われた時はガッツポーズでしたが、そこで本当にやるかやらないか、コロナで振り分けられたのかなと思います。

中道:僕はコロナのど真ん中にロンドンでレストランを開業したんです。海外から日本に帰って来ると、ご飯が本当に美味しいと思うんです。それは日本人に限らず、海外から日本に来た人も同じです。ところが海外で日本食と言うと、いまだに寿司とかラーメンとか焼き鳥だと思われていますよね。

でもそれは、おそらく日本人が日本食をちゃんと伝えていないから。そこを新しい形で伝えたいという思いで、コロナの時期で大変でしたけど開業しました。自分がやろうとしていることには意味があるのだと勝手に思っているところがあります。

岡田:食の事業はものすごく難しいので、大儀がないと完結できないところがありますよね。

日本の食文化はラーメンとか寿司だけではなくて、もっと多くのものを包括していることを現地の人に理解してもらい、食べてもらうには、伝えるという大きな労力がかかります。

良いものや良い食材を持って行っても、発信する力が非常に弱いために予期せぬ方向に変化してしまったり、なかなか発信できなかったり。そこがジレンマであり永遠のテーマだと僕は思っています。

中道:そのテーマについて次回、お話を聞かせてください。

文=久野照美 編集=鈴木奈央

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