ビジネス

2023.06.03 09:30

和菓子をタイで、日本食材を米国で 「変化」がチャンスを生む

Shutterstock

岡田:海外の方は、日本の映画やアニメからイメージを抱いている程度で、ほとんど知識がない状態でした。
advertisement

ある時、タイのお客さんから冷凍の和菓子を輸入したいという話がきたんです。スーパーマーケットなどにキャンディなどのお菓子を卸している会社でした。和菓子のお店をつくり、そこで輸入した冷凍和菓子を解凍して提供したい。店のコーディネートまでやってくれと言われて。

まず、日本に来ていただいて、いろいろな和菓子店を見てもらい、体験してもらうことで、日本の和菓子や文化を理解してもらうところから始めました。そこから店舗を立ち上げて、スタッフの教育やオープニングまでやらせてもらいました。

中道:海外の人が思う日本と実際の日本はすごく違いますからね。
advertisement

岡田:違いますね。日本人は「日本文化はこうだ。それ以外のやり方は間違いだ」という意識がすごく強いですよね。でも、日本と同じ見せ方をしても海外の人には響かないんです。

僕は文化というのは変化するもので、変化させられるかどうかが成功のカギかなと思うんです。日本のやり方や見せ方に固執して柔軟に対応できないためにビジネスチャンスを失っているケースがとても多いので。
Shutterstock

Shutterstock


タイで和菓子店を開いたお客さんから、店名を「花びら」にして花びら餅を店のシグネチャーアイテムにしたいと言われました。昔の日本映画で花びら餅を見てえらく気に入ったのだそうです。日本では花びら餅は年末から1月にかけて店頭に並ぶ季節の和菓子です。でもそれを前面に出したいと要望されたので、花びら餅が売れるような商品構成を考えました。

商品の説明も、文化的にどうこうというのではなく、花びらの形をしているから花びら餅というのだとシンプルな説明に変えました。店舗で抹茶を提供するために、タイ人のスタッフでもお茶をたてられるように簡単なお抹茶の立て方をYouTubeで検索して教えました。結果的にそれがタイで受け入れられて、4店舗まで広げられました。

中道:アジアでの活動を経てアメリカからお声がかかるわけですが、どういう経緯だったのですか。

岡田:当時アメリカの商社に日本から水産品を輸出していたんです。営業活動でアメリカに行くなかで、良かったらうちに来ないかと誘われました。

その時、アメリカに長くいた日本人の知人から言われた言葉を思い出したんです。「食品業界は、胃袋×ビジネスだよ。国連統計では2050年に日本の人口は1億人を切るけど、アメリカは3億人超える。どっちの市場を見るのがいい?」って。僕は経済がどんどん成長するさまを見たいと思っていたので、二つ返事で「行きます」とこたえました。
次ページ > コロナにより大打撃を受けるも──

文=久野照美 編集=鈴木奈央

タグ:

連載

VISION TO THE FUTURE

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事