ボリス・ローテンベルクとアルカジー・ローテンベルク兄弟
プーチン大統領の黒海宮殿の所有者とされるボリス・ローテンベルクとアルカジー・ローテンベルク兄弟は、天然ガスパイプラインや電力供給網などを手掛けるロシア最大の建設会社ストロイガスモンタージュを所有している。欧米全域で制裁対象となっているにもかかわらず、生活に不可欠な建築資材に対する制裁が遅れているため、ローテンベルク兄弟とその家族は5億ドル(約680億円)~62億ドル(約8400億円)の利益を得て、富を増やしているとフォーブスは推定している。ロマン・アブラモビッチ
ロマン・アブラモビッチは、制裁後に行動を変えた数少ないオリガルヒの1人だ。現在はガスプロムの傘下となった石油会社シブネフチの社長を務めていたアブラモビッチは、米国を除くほとんどの西側諸国で制裁の対象となっており、約102億ドル(約1兆3800億円)を失った。プーチン大統領との関係にもかかわらず、アブラモビッチと娘のソフィヤはウクライナを支持していると公言。戦争被害者に多額の寄付をしながら、ロシアとウクライナの仲介役を果たし、捕虜交換を促した。アブラモビッチが毒を盛られたのは、このせいなのかもしれない。アブラモビッチも制裁をかわしてきた。自身のヨットを制裁のない港に移し、制裁を受ける数日前に数百万ドルもの資産を自身の子どもたちに譲渡し、西側諸国にある不動産の大半を売却しようとしたが、まだ海外に数十億ドルの資産を保有している。アブラモビッチは現在ドバイで家探しをしながら、自身を支援した「黒幕」に英政府が制裁を科す中、資産の凍結を解除するために欧州連合(EU)を訴えている。制裁を受けた直後、アブラモビッチは自身が所有していたイングランドのフットボールチーム「チェルシー」を売却せざるを得なくなり、その収益をウクライナの戦争被害者に寄付することを誓った。
エネルギー業界のオリガルヒの大半はロシア国内で資産を維持しているが、資産を他の人物や組織に譲渡したり、制裁回避地に移したりすることで、制裁をかわしてきた。理論上は制裁対象となる国でも強固に事業を続けているオリガルヒもいれば、新たな市場を求める者もいる。制裁によってプーチン大統領の取り巻きの構成は一変したかもしれないが、エネルギー事業を営むオリガルヒの多くが裏でロシアの国家と軍備に資金を提供し、そうでない者は戦争とともにロシアが孤立し、政治的過激主義に向かっていく姿を恐怖の目で見守っている。
制裁は、攻撃的な行為や違法行為、虐待的な行為に対する非難の意を表明し、国家を罰するかもしれないが、ロシアの対ウクライナ政策を変えるにはほとんど役に立たなかった。実際、ロシア政府は発言を段階的に強めつつあり、ウクライナやそれ以外の地域で一層過激な手段を準備している可能性もある。プーチン大統領の側近は、指導者の政策や言動を変えることができないようだ。となると、有効な制裁は、ロシア国家の戦争継続のための収入を断つもの、あるいは広範な民衆の不満を助長するようなものだけとなりそうだ。
(forbes.com 原文)