経済

2023.05.27 10:00

プーチン大統領の取り巻きの億万長者は一体どこにいるのか?

2020年3月18日、ロシア占領下にあるウクライナ南部クリミア半島セバストポリで開かれた表彰式で、ロシアの億万長者アルカジー・ローテンベルク(左)らと談笑する同国のウラジーミル・プーチン大統領(中央、Getty Images)

ニコライ・トカレフ

プーチン大統領がソビエト連邦国家保安委員会(KGB)に勤務していた頃からの長年の友人であり、欧米の制裁を受けた国営石油輸送企業トランスネフチの社長ニコライ・トカレフの資産は、約500万ドル(約6億7000万円)と評価されている。これは、トカレフの地位や人脈を考えると、かなり控えめな数字かもしれない。クロアチアに残っている財産を見ればわかるように、トカレフは制裁の大半を免れることができた。トランスネフチは債務や株式の保有を禁じられている。だが、石油や天然ガスの需要が増えれば、こうした制裁はすぐに意味をなさなくなるかもしれない。

イーゴリ・セーチン

国営石油企業ロスネフチの社長イーゴリ・セーチンは、米国の特別指定国民とブロック対象者リストに登場する唯一のエネルギー業界のオリガルヒだ。後述するアレクセイ・ミレルのライバルであるセーチンとその家族は、欧米全域で制裁対象となっている。米国は2014年3月、セーチンを制裁対象とし、ロスネフチは分野別制裁識別リストに掲載された。フランス当局は昨年3月、秘書から妻になったオリガ・ロジュコワのためにセーチンが購入したヨット「聖プリンセス・オリガ」の差し押さえに動いた。ロジュコワがイタリア人フォーミュラレーサーと再婚するためにセーチンと離婚した時、船の名前は「アモーレ・ベロ」(イタリア語で「真の愛」)に改名された。
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ロスネフチが所有していた航空機が差し押さえられたにもかかわらず、セーチン本人は制裁をかわし、影響力を持ち続けている。ロスネフチは最近、欧州の損失を穴埋めするためにインドに石油を輸出した。英BPは依然としてロスネフチの株主だ。制裁の被害を被ったとはいえ、セーチンは欧米の株主やアジア市場に守られているのだ。

イーゴリ・ユスフォフ

エネルギー分野の事業会社に特化した投資企業フォンドエネルギヤの創設者兼会長であるイーゴリ・ユスフォフは、かつてロシアのエネルギー相も務めていた。ユスフォフの純資産は、制裁前の時点で11億ドル(約1500億円)だった。ユスフォフは、ドミトリー・メドベージェフ前大統領の資産を隠す役割を担ったとされ、同大統領の「財布」とも呼ばれている人物だ。それにもかかわらず、ユスフォフを制裁対象としているのはウクライナのみ。息子のビターリーはドイツにある造船所と米カリフォルニア州メンローパークにある7200万ドル(約97億円)の豪邸を依然として所有している。だが、ユスフォフは今年「億万長者」の地位から転落しており、無傷で制裁を切り抜けたわけではない。

アレクセイ・ミレル

池の中の一番大きな魚である国営天然ガス企業ガスプロム会長のアレクセイ・ミレルは、数十年にわたってプーチン大統領の信頼を得てきた。25億ドル(約3400億円)の資産を持つとされるミレルは、多くの国で制裁対象となっている。どうやらミレルはシロビキに加わる決意を固めたようだ。国内のエネルギー権益を守るため、ミレルは3月、ガスプロムの民兵を設立しようとした。
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翻訳・編集=安藤清香

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