より直接的な影響をもたらしたのは、中国からの輸入品に対する米国の関税だ。2018~19年にドナルド・トランプ前大統領の下で段階的に発動した対中追加関税は、トランプ政権の政策を端から覆す傾向のあるジョー・バイデン政権下でも継続されている。台湾の対中投資の多くは、最終的に米国に出荷される商品を支えてきたことから、関税によって中国事業はかつてほど魅力的ではなくなった。
そこで台湾の投資家は、関税が適用されないインドやベトナムなどへ投資資金を移し始めたのだ。2019~22年にベトナムから米国へ輸出される台湾の技術製品は倍増。インドからは72%増加した。Apple(アップル)は2027年までにインドでのiPhone生産を現在の5%から50%に増やす計画を立てており、インド重視の機運が高まることは間違いない。
こうした動きは台湾当局の政策ではなく個々の企業判断を反映したものだが、中国政府は報復措置として、台湾と締結している海峡両岸経済協力枠組協定(ECFA)を破棄する構えを見せている。ただ、最近の人民解放軍の行動を考えると、この脅しに効果はないだろう。そのうえ、CEFAは現在中国に流入する台湾製品のわずか5%をカバーしているにすぎない。貿易面で脅威を感じるどころか、中国が依然として台湾の半導体に大きく依存している間に、台湾は中国依存から脱却し多様化へ向かっているようだ。実際、最近の中国が軍事的な示威行動を好み、軍事行動を公然と予告しているのは、台湾に有利な経済的非対称性を中国指導部が理解していることの表れといえるだろう。
(forbes.com 原文)