同研究所はランキングをまとめた報告書「アジア・パワー・インデックス」で、「2022年の中国は孤立が順位に大きく影響したが、軍事力はこれまでになく強まった」と指摘。「浮かび上がる図はこうだ。中国の総合的な影響力は依然として米国に後れをとっているが、その差は大きくない」としている。
米国は先週、国内の主要軍事施設の上空を偵察飛行していたとみられる中国の気球を撃墜した。気球の飛来は米国で大きく報道されており、台湾を含む地政学的な問題ですでに緊張している米中関係に圧力を加えることになりそうだ。
今回の問題は、米国やアジアの他の国々に大きな経済的影響をもたらしうるものだ。アジア諸国の一部は今年、急速な経済成長が予想されている。香港と中国本土の主要株価指数は6日、米中間の緊張激化によるビジネスへの影響の懸念を背景に下落した。
香港のGrow Investment Group(グロウ・インベストメント・グループ)の公認証券アナリスト、ハオ・ホンは「今回の事案は中国に投資する際に現在広く見られる地政学的リスクを投資家に喚起している」と電子メールで述べた。「とはいえ、今回のタイミングは奇妙で、メディア報道では多くの疑問が呈されている。中国は新型コロナウイルスに関する政策を転換して以来、国際関係を修復しようと努力してきたが、信頼回復には時間がかかることを、今回の事案は示している」
同研究所のアジア・パワー・インデックスは、資源と影響力を測定してアジアにおける各国の相対的な勢力を分析。26カ国・地域を対象に、軍事力や防衛網、経済力、外交面と文化面での影響力、そして回復力と将来の資源など、133の指標を通じ、それぞれの国・地域が外部環境を形成する能力を順位付けした。
米国、中国、日本、インド、ロシアの上位5カ国はいずれも「総合力スコア」が前年より低下。その中でも同研究所は、「過去5回のインデックスで最大の驚きは、中国が総合的な国力において米国を上回ることはおろか、米国と肩を並べることも、差を大きく縮めることもできなかったことだ」と指摘した。
「米国は過去5年間にわたって主要な超大国として、僅差ながらも強固な優位性を維持してきた。中国をほぼ同等の競争相手とする米国の見方は、今後も無期限で続くかもしれない。現在の傾向からすると、中国が2020年代末までに総合力で米国を追い抜く可能性は低い。たとえ数十年以内に追い抜くとしても、かつて米国がそうであったような支配的な立場に中国が立つ可能性は、極めて低いと思われる。中国はアジア経済の中核に位置することで、力を得ている。米国はその軍事力と、比類のない地域防衛網から力を得ている」
その他、インドは地域の均衡に「不均一な」戦略的貢献をしていると分析されている。日本は、弱まる経済力などを埋め合わせる形でこれまで活用してきた「スマート」な影響力を失いつつあるとされた。
また、東南アジアの外交努力がこれまでになく活発化していることや、これまでアジアと防衛面で関係を維持してきたロシアの影響力が低下しつつあることも指摘された。
報告書はこちらで閲覧できる。
(forbes.com 原文)