主導権を握っているのは、むしろ台湾企業だ。外交的・政治的な理由ではなく、限られた自社の事業利益のために、かつては疑うべくもなく密接だった中国との結びつきを弱めようとしている。台湾ビジネス界の動きには、中国政府の軍事的意図への懸念が影響しており、大部分は収益性とリスクを冷静に判断した結果である。これを踏まえると、このデカップリングは持続的な動きとなりそうだ。
この流れを最も如実に示しているのが、投資の流れだ。2017年に90億ドル(約1兆2000億円)相当だった台湾の対中直接投資は、完全なデータが入手可能な直近期である2022年には17億ドル(約2300億円)を割り込み、81%も減った。台湾企業が投資そのものを控えているわけではなく、投資努力を中国から遠ざけているのだ。これまで中国に流れていた資金が東南アジアやインドに流入しており、欧米さえも中国の相対的な犠牲で利益を得ている。
かつて対中投資は台湾の海外投資全体の3分の2を常に占めていたが、今や3分の1に縮小した。対シンガポールよりもやや少なく、対米投資とほぼ同額だ。また、台湾の対中輸出の大部分は台湾の工場で組み立てられる部品なため、この投資シフトによって、台湾から中国への電子機器輸出の伸び率は、2020年の24%増から昨年はわずか11%に鈍化した。
台湾周辺での中国の軍事的な威嚇行動が、この投資と貿易のシフトに一役買っているのは間違いない。さらに、2つのビジネス主導の判断が影響している。1つは生産コストで、特に中国の賃金が他国と比較して著しく上昇している点だ。台湾企業が長年にわたり中国での事業を優先してきたのは、安価で規律ある労働力を活用するためだった。しかし、中国の経済発展とともに賃金水準はアジア諸国や西側先進国に追いつきつつある。