これは、せっかく小売店や飲食店までリレーされてきた情報を消費者は知ることができないかもしれないことを意味している。大型小売店などでは情報開示が義務化されると、システム開発や入れ替えに大きな負担があることは理解できるが、消費者にも知る権利があるのではないか。
法律をより完全なものにすることによって、消費者の知る権利を守り、持続可能な水産業を確立し、消費を活性化させることも重要なのではないだろうか。その間、さらなる法制化を待たずとも、小売を担う事業者は自主的に持っている情報を開示することもできるので、消費者がそれらの情報を求めていけばよいのだ。
すでに牛肉や卵、米などは生産者の顔が見える販売が一般化し、ブランド化に成功している。このように水産物も、どこで誰がどのように獲ってきてくれたのかが消費者に明確にわかれば、安心安全に加えてブランディングによるプライスプレミアムも期待できるはずだ。
G-Oceanジェネレーション・オーシャンの最後には、漁獲情報が明確なサステナブルシーフードによるランチが提供された。世界初のクロマグロの水産エコラベルである「MSC認証」を取得した臼福本店のクロマグロの海鮮ちらしや牡蠣のグラタンなどが参加者たちの人気を集めた。
最近ではJALの機内食でも、「MSC(Marine Stewardship Council=海洋管理協議会)」や「ASC(Aquaculture Stewardship Council=水産養殖管理協議会)」といった団体による国際漁業認証を取得した水産物にはエコラベルが明記されるようになった。
持続可能な水産物の評価プログラムである「ブルーシーフードガイド」のパートナーは、デニーズやシダックス、東京2020オリンピック・パラリンピックの選手村で飲食の提供業務を実施したエームサービスなどをはじめ60社を超え、現在も増え続けている。
法律で義務化されてはいないとはいえ、このようにサステナビリティの情報を商品に付加して消費者に届けることは、小売店や飲食店の「努力」に任されている。市場も消費者も、漁業者や流通の顔の見えるシーフードを楽しめる仕組みづくりに待ったなしで動きはじめているなか、これからも社会の持続可能性に向けた両者の意識の高まりが試されている。
連載 : 海洋環境改善で目指す「持続可能な社会」
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