リーダーに必要な「ちょっと立ち止まる力」、ポジティブから「ポージティブ」へ

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ウィリアムズによれば、ポージティビティの実践とは、状況を新たな視点から見つめ直し、自分や他者についての真実をさぐることを意味する。たとえば、自分のいまの精神状態についても「よい(fine)」かどうかですますのではなく、感情を表す単語を円環に並べた図「感情の輪」を活用して、正確に言い表してみるよう勧めている。最初は「満足」か「不満」かから始めるとよいかもしれないという。

ポージティビティをマスターしたリーダーは、エネルギーを高めるための次の段階に進める。そこでのやり方は一言でいうと「サウボナ」というアフリカのあいさつで説明できる。サウボナは「わたしにはあなたが見えています。あなたはわたしにとって大切な存在です。あなたを大事にします」と訳すことができる。つまり、それぞれの人を、個性をもった存在として扱うという意味だ。ウィリアムズはやはり自身の経験から、1人1人の顧客が特別に、大切に扱われていると感じられるようにすることの重要性に気づき「人がして欲しいと思っていることを人にしなさい」という白金律(プラチナルール)を受け入れるようになったという。

相手の個性を尊重しつつ感謝の気持ちを伝えるには「ありがとう(thank you)」に代えて「感謝します(I appreciate)」という言葉を使うのがよいと、ウィリアムズはアドバイスする。後者では、具体的に何について感謝しているか、はっきり伝えることになるからだ。相手は、どんなこと、どういうところに感謝しているかを伝えられると、この人は自分のことを見てくれている、評価してくれていると感じやすい。ウィリアムズ自身、最初の勤務先であるマクドナルドで完璧な「クォーターパウンダー」をつくることにひたむきに取り組んだところ、客から感謝の気持ちを伝えられたり、高く評価してもらったりするようになり、それが励みになってさらに意欲が湧くことになったという。

リーダーのエネルギーを活性化するには、ポージティビティと他者の個性の尊重に加えて、心身ともに満たされた状態「ウェルビーイング」に配慮することも欠かせない。十分な休息、運動、そして栄養は、高いエネルギー水準を保つのに必須のものである。リーダーはさらにセルフケアにも気を配り、健康的な生活を習慣づけてエネルギーが1日中、持続するようにしなくてはいけない。

また、ポジティブな職場環境を整えることやオープンなコミュニケーション文化を育むことも、リーダーのエネルギーを大きく高めてくれるだろう。従業員たちに自分の考えやアイデア、あるいは懸念していることを積極的に言ってもらうようにすると、彼らの帰属意識は高まり、職場に協力的な雰囲気が広がる。すると、今度はこうした環境が熱意やモチベーション、強い目的(パーパス)意識を育み、結果としてリーダーにとっても、また組織にとっても恩恵をもたらしてくれるのだ。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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