リーダーシップについて語るときに思い出すのが、30代前半の頃にしてしまった自分の大きな失敗だ。この経験をきっかけに、僕は本当のリーダーシップとは何かを考えるようになった。今でも振り返るたび苦々しい気持ちになるそのエピソードは、R/GAという会社からAKQAという会社に転職をした直後のものだ。
R/GAにいた20代後半からプロジェクトやチームのリーダーを任されるようになってはいたが、組織を統括したり経営に関わったりするレベルのポジションではなかった。そんな僕が、AKQAというクリエイティブ・エージェンシーにエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター(ECD)の立場で入社した。
正直30歳でこのタイトルをもらうのはかなり早く、期待される役割もR/GAにいた時とは大きく変わった。それまでは自分もバリバリ手を動かしながらチームを引っ張っていたのに対し、AKQAでは、自分が手を動かすことなく、指示によってチーム全体のレベルを押し上げることを求められるようになったのだ。
そんな背景もあり、着任初日はとても気合いが入っていた。だから、同じタイミングにECDとして入社したブラジル人の同僚と話し合い、まずはチーム全員に対してリーダーシップを示す機会を作ろうと考えた。
チーム全員と話す機会を作ったところまでは良かったと思う。ただ、やり方が全く良くなかった。まだまだ本当のリーダーシップがどんなものかを知らなかった僕(たち)は、「強い言葉でチームにプレッシャーをかける」という方法を選んでしまったのだ。
具体的にどのような話をしたかは思い出せないが、それまでのチームのやり方を否定して、新しい路線を示そうとした。
結果は最悪で、僕たちが長々と30分間ほど話し終えたあとのオフィスは、文字通りシーンとしていた。アメリカのオフィスでプレゼンの後にシーンとするのは、かなり珍しい。
僕としては「ハッパをかけた」つもりだったが、それがメンバーのモチベーションを上げることはなく、反発を招くだけに終わった。今になってみれば当然の結果だったと思う。
振り返ると、キャリアのいろいろな段階でリーダーシップに関しての学びはあった。その時は気がつかなかったこともあるが、こんな失敗談こそが後にいろいろな学びにつながった。今回はそんな経験を振り返りながら「リーダーになる人のための4つの問い」を投げかけたい。