激動の中にあるGAPにはあまり時間が残されていない

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「GAP(ギャップ)」「BANANA REPUBLIC(バナナ・リパブリック)」「OLD NAVY(オールドネイビー)」「ATHLETA(アスレタ)」などを擁する米アパレル小売大手ギャップは、ここ1年ほど、経営陣の入れ替わりに明け暮れた。2023年4月27日には、新たに従業員1800人を削減すると発表。今回の削減数は、全世界の従業員の約2%に相当し、2022年9月に削減した500人を大きく上回っている。

こうした激動の背景には、業績不振に悩む店舗や経営幹部の相次ぐ退社がある。同社を去ったのは、最高成長責任者(CGO)アシーシュ・ソクセナ、最高人財責任者(CPO)シーラ・ピータース、アスレタの会長兼最高経営責任者(CEO)メアリー・ベス・ロートン、オールドネイビーのCEOナンシー・グリーン、そして、ギャップのCEOソニア・シンガルなどだ。こうした退陣劇の多くを指揮しているのが、ギャップ会長で、シンガルの退任後に同社の暫定CEOに就いたボブ・マーティンだ。

しかし、ギャップにはあまり時間が残されていない。

複数のチャネルとブランドを擁するギャップには、フレッシュで創造力豊かなリーダーが必要だ。全社を統括する最高成長責任者は要らない。各傘下ブランドの先頭に立つ人間が、それぞれイノベーションを打ち出すべきだ。さらに店舗マネージャーは、顧客が求めるものを把握し、それを適切なタイミングで品揃えにすばやく反映させなくてはならない。コロナ禍を経た若者が望んでいるのは、1年前の古いアイデアではない。

シンガル退任後にギャップの暫定CEOに就いたマーティンは、ウォルマートで40年の経験を積んだ人物だ。ウォルマート国際部門のCEOを務めたが、その前にも同社で要職を歴任してきた。2002年にギャップの取締役会に加わり、翌年2003年には筆頭取締役に就任。2018年には取締役会全体を統括する会長となった。

シンガルは、18年間にわたってギャップの経営に携わったのち、2022年7月11日に退任したが、そのとき同社の人々は代わりが見つかることを願っていたはずだ。売上150億ドル(約2兆200億円)の企業を率いるのは簡単なことではない。今後の成長を見据えてビジョンを描けるリーダーが必要だ。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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