宇宙はこれまで、国家的な利害を超えた領域とみなされ、その開発は対立ではなく協力によって進展してきたと考えられてきたが、サルツマンの発言は、こうした考え方とは相反するものだ。宇宙軍の存在そのものが、これまでの宇宙開発の考え方に反していると主張する人々もいる。
2019年に当時のドナルド・トランプ大統領が、米軍の一部として宇宙軍を創設したとき、真っ先に反対の声をあげた組織の1つが、マサチューセッツ工科大学で立ち上げられた非営利の科学者団体「憂慮する科学者同盟(UCS)」だった。
反対の主な理由は、人工衛星の安全性だ。UCSは、宇宙を国家の領土的な観点でとらえると安全性が損なわれると主張している。サルツマンも、地球周回軌道の安全保障化(securitization:特定の問題が安全保障上の問題となること)問題に焦点を当てる際に、まさにその論点を引き合いに出した。
地球の軌道上を回る人口衛星数ランキング(国別、2022年5月時点)
(出典:UCS人工衛星データベース)
1位:米国、3415基
2位:中国、535基
3位:英国、486基
4位:多国籍、180基
5位:ロシア、170基
6位:日本、88基
7位:インド、59基
8位:カナダ、56基
では、人工衛星の安全性を保つには、どんな方法が最善なのだろうか? UCSの人工衛星データベースを見ると、この分野はこれまで、高い水準の国際協力の下で進められてきたことがわかる。そうした協力は、宇宙を中立の場所とする考え方に基づいて行われてきたものだ。