しかし近年では、ある宇宙大国の優勢が確固たるものになっている。その国とは米国だ。2020年初めの米国の衛星数は、2位の中国の4倍だったが、2022年5月には、中国の衛星の7倍近い米国の衛星が軌道を回るまでに差が広がっている。
こうした急速な変化の一部は、小型衛星を大量に宇宙へ送り出すことを可能にした衛星技術の進歩で説明できる。2020年には、商用の衛星は全体の半分余りだったが、2022年には、その割合はほぼ4分の3にまで増加した。
宇宙空間における脅威とは
宇宙の商業化が急速に進む一方で、宇宙の安全を脅かすとして(米宇宙軍などから)見なされている、別のタイプの人工衛星がある。これまでは、現実世界の状況を背景に、データ収集衛星の打ち上げが中断されたことはあるものの、宇宙に存在する衛星が敵国に攻撃されたことはない。とはいえ、それが起きる可能性は存在しているとCNBCとサルツマンは述べている。中国は、衛星攻撃能力を備えた衛星を保持していると報じられているほか、ロシアも衛星攻撃ミサイルの実験を行っている。宇宙の安全保障化は、より大きな地政学的な対立の一部になっているのだ。
国家間の緊張が高まりつつあるいま、宇宙を地球上の対立から切り離し、中立の状態に保つことは、ますます難しくなっていくだろう。2022年10月には、国際安全保障と軍縮などに関する国連の委員長たちが、宇宙における軍拡競争を防ぐための新たな提言を行った。
国連は、宇宙を平和的な協力の可能性を探る枠組みのなかにとどめておくため、通称「宇宙条約」について早い時期から議論をおこなってきた。そして、1967年に発効したこの条約には、多くの国が署名・批准した。だが、国連条約が往々にしてそうであるように、この条約も拘束力がないと見なされているのが現状だ。
(forbes.com 原文)