厳しい性別デジタルデバイド 低所得国で女子の9割がネット使えず

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情報通信技術(IT)を活用できる人とできない人との間に生まれる格差、「デジタル・デバイド」。その種類は、先進国と低所得国との格差、都市部と地方との格差など、いくつかに分類される。ユニセフ(国連児童基金)は4月27日、低所得国では若年層において性別による厳しいデジタル・デバイドが存在し、デジタル社会の中で女の子が取り残されているという報告書(※)を発表した。

報告書では主に、低所得国、下位中所得国などで15~24歳の若年層におけるインターネット利用や携帯電話の保有、デジタル技能に関するデータを分析し、ジェンダー間のデジタル・ディバイドを考察。

その結果、低所得国では15~24歳の女性の約90%がインターネットを利用していない一方、同世代の男性がインターネットを利用している割合は2倍であること。さらに15~24歳の女性は、学習や雇用に必要な技能を身につける機会が極めて少ない状況下にあり、32の国と地域の平均では、ファイルやフォルダのコピー・貼り付け、電子メール送信などといった簡単な作業を含むデジタル技能を持つ可能性が、同年代の男性よりも35%低いことが分かった。

また、根本的な障壁はインターネットにアクセスできないことではなく、教育環境と家庭環境がジェンダーによるデジタル・ディバイドに決定的な影響を与えていると示唆。例えば同じ家庭内でも、15~24歳の女性がインターネットやデジタル技術に触れ、十分に活用できる可能性は、同世代の男性よりもはるかに低く、41の国と地域では、男の子に携帯を持たせる世帯の割合が、女の子に持たせる世帯を大きく上回った。
タリバンによって女子中等教育が禁じられているアフガニスタンのアレソさん・18歳(仮名)。学校に通えなくなり、家庭が貧しく自宅にインターネットもないため、オンライン学習も受けられずにいる(2023年3月12日撮影)

タリバンによって女子中等教育が禁じられているアフガニスタンのアレソさん・18歳(仮名)。学校に通えなくなり、家庭が貧しく自宅にインターネットもないため、オンライン学習も受けられずにいる(2023年3月12日撮影)


他にも報告書では、基礎的な読解・計算力を身につけるための機会を女の子が同世代の男の子と同じように得て、男の子と同等かそれ以上の成績を収めたとしても、それが必ずしもデジタル技能に結びつくとは限らないと説明。ユニセフはそうした考察を踏まえて、ジェンダー間のデジタル・ディバイドを解消するため、各国政府やパートナーに次の提言を行った。



・コミュニティにおける支援計画を含め、学校内外を問わず女の子と男の子に平等にデジタル技能を教える。
・仮想安全空間、政策・法規および教育を通じて、女の子のインターネット上の安全を守る。
・デジタルおよび科学・技術・工学・数学(STEM)分野におけるピア・ラーニング、メンタリング、インターンシップ、ジョブシャドウイングへの女の子の参画を促進する。



ユニセフ教育部門長のロバート・ジェンキンス氏は、ジェンダーによるデジタルデバイドを解消することとは、「女の子たちが革新者、創造者、そしてリーダーになれるよう、本来持っている能力を発揮できるようにすること」だと説明。さらに「労働市場、特に科学・技術・工学・数学分野におけるジェンダー格差に取り組みたいのであれば、若者、特に女の子がデジタルスキルを身につけるよう支援することから今すぐ始めなければなりません」と述べ、理解を求めた。

※「Bridging the Digital Divide: Challenges and an Urgent Call for Action for Equitable Digital Skills Development(デジタル・ディバイドの解消――デジタル技能の公平な育成における課題と緊急行動の必要性)」

プレスリリース

文=大柏 真佑実

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