韓国は今回、是が非でも勝ち取らなければいけない対米要求がいくつかあった。経済では「IRA(インフレ抑制法=Inflation Reduction Act)」、と「CHIPS(半導体関連法=CHIPS and Science Act)」の、韓国企業への例外扱いが焦点だった。気候変動対策なども盛り込んだIRAに従い、米政府が今月17日に発表した電気自動車(EV)への補助金支給対象車種は、すべて米国メーカー製だった。
CHIPSは、中国との最先端半導体競争に勝利するため米国産業の育成などを目指す。韓国のサムスン電子など半導体メーカーが米国からの補助金を受ける場合、中国への投資が制限されたり、企業秘密を米政府に知られたりする可能性が指摘されている。
共同声明では韓国企業への例外扱いは盛り込まれなかった。それどころか、米韓の国家安全保障会議(NSC)が「次世代核心・新興技術対話」を設立し、半導体などのハイテク技術協力の促進で合意した。キャサリン・スティーブンス元駐韓米国大使は「米国は、日韓を中国から引きはがしたいと考えている」と断言する。これでますます、サムスン電子は中国市場からの退場を余儀なくされるだろう。韓国の専門家の1人は「今回のワシントン宣言は、韓国版プラザ合意(1985年。ドル高是正のための合意で、日本は円高が進行し、輸出に大きな打撃を受けた)になるかもしれない」と語る。
安全保障分野では、韓国は米国の「核の傘」への関与を目指した。米国は戦後秩序の象徴である核兵器の扱いについて、決して他国には触らせない。日本政府が、核の運用について遠回しに聞いても、説明を避けるどころか、「そんな計画はない」と堂々と言ってのける。米韓は共同声明で、「核協議グループ(NCG)」の創設を盛り込んだ。しかし、すでに米韓は2011年から定期的な拡大抑止協議を行ってきている。簡単にいえば、「韓国が核攻撃に遭ったら、米国は必ず核で報復するから安心しろ」ということを、手を変え、品を変え、説明してきたに過ぎない。あるときは、秘密の核施設を見せたり、あるときは核を使う図上演習に付き合ったりしてきた。でも、作戦計画を共有したことはない。少なくとも、バイデン大統領は26日の会談後、そのような事実は認めなかった。