船舶を電動化することで二酸化炭素排出量を減らせるのはもちろんのこと、船の構造を単純化でき、しかも自動制御が可能になることから船の運航の自動化や管理の効率化も期待できます。そこは電気自動車と同じ理屈です。電気自動車では世界に後れをとった日本ですが、2019年、旭タンカー、エクセノヤマミズ、商船三井、三菱商事はジョイントベンチャーe5 Lab(イーファイブラボ)を設立してEV船開発を開始し、昨年には世界初のEVタンカー「あさひ」(492トン)を就航させるなど、船舶のEV化に力を入れています。また、EV船を中心とした海運DXのためのプラットフォーム「Marindows」を開発して世界をリードし、日本の造船業の復活をEV船にかけています。
今回、大阪に就航したEV観光船は、小型船舶のEV化を推進するEV船舶販売が建造しました。特徴は、350ボルトという高電圧のリチウムイオンバッテリーで駆動することです。船舶安全法小型船舶安全規則ではEV小型船舶の供給電圧は250ボルトと定められていますが、特殊船舶として日本小型船舶検査機構の検査を受けて合格しています。
高電圧化のメリットは電気駆動系の効率化にあります。電気自動車でも高電圧化が進んでいますが、電圧を上げることで配線損失が低減し、モーターをはじめとする電気機器の小型軽量化が実現します。また充電にかかる時間も短くできるなど数多くの利点があります。そのため、この高電圧EV小型船が認可されたことは、今後のEV小型船の普及促進が期待できるのです。
私たち一般の人間がEV船の恩恵を身近に感じられるのは、このような観光船ではないでしょうか。観光船や遊覧船に乗ると、エンジンの音が思いのほかけたたましくて驚きます。また後部甲板ではエンジンの排気をかぶったりして気分が壊されることもあります。静かなEV船なら、波の音を聞きながら水の上でリラックスできそうです。早く普及してほしいですね。
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