自動車産業は変革期を迎えており、より安全かつサステナブルで、よりインクルーシブなモビリティの実現に期待が高まっています。
ソフトウェア駆動型の時代における自動車イニシアチブでは、自動車、新モビリティ、ICTの3分野の企業が連携し、モビリティ社会にプラスの影響をもたらすことを目指しています。本題についてWEFのアジェンダからご紹介します。
自動車を構成する最も複雑な要素といえば機械部分でしたが、それはもはや過去の話。自動車は今、スーパーコンピューターを搭載した車両へと進化を遂げつつあります。自動車業界そのものも、データやソフトウェア、AI(人工知能)の導入による変革期を迎えています。時代は、ソフトウェア駆動型自動車へと移行しつつあるのです。
自動車業界は、100年以上前にヘンリー・フォードがライン生産方式を初めて導入し、自動車の大量生産を成功させたとき以来、最大の変革期を迎えています。インテリジェントに進化した自動車は、自動車業界自体だけではなく、私たちユーザーのモビリティのあり方をも変えつつあります。それは、より安全且つサステナブルで、よりインクルーシブなモビリティを提供し、私たちの日々の移動にプラスの影響をもたらすものです。
1. より安全なモビリティ
交通事故の90%以上は、ヒューマンエラー、つまり運転者のミスが原因であることが、米国運輸省道路交通安全局(National Highway Traffic Safety Administration、NHTSA)のデータやその他の調査で明らかになっています。交通事故による死者をなくすという目標を達成する上では、先進運転支援システム(Advanced Driver Assistance Systems、ADAS)などのテクノロジーが有効です。機械ならば人間のように同じミスを繰り返すことはありません。では、ADASなどの安全テクノロジーは、どのように道路上の安全性を向上させるのでしょうか。それを説明するために、ソフトウェア定義型自動車が機能する仕組みを6階層に簡略化してまとめたのが図1です。この図では、これら6階層が道路上の安全にどのように寄与するか、例として道路上にある物体をどのように検知するかを簡単に示しています。
世界経済フォーラムでは、5年前から自律走行車(AV)に関するイニシアチブをいくつか展開しており、自動車業界の安全性確保に向けた取り組みと、AV公共政策を周知するための支援を行っています。その一つが、安全走行イニシアチブ(Safe Drive Initiative)です。このイニシアチブでは、AVの安全性への理解促進にまつわる課題を分析するとともに、実際の道路で安全走行を実現するためのシナリオベースのアプローチを提案しました。
「ソフトウェア定義型自動車の実現には大きな課題がいくつかあります。それらを効率的かつ安全に解決していくには、業界で長期的に強固な協力関係を築いていくことが重要です」―ボッシュ・モビリティ 事業部長、マルクス・ハイン博士