「トップ主導」+「ゆっくりと」で行動変革は叶う
著者によると、AGCの例にあるように、タイトな文化を持つ日本企業でも、「社内の行動様式は変えることができる。タイトな文化の中でカルチャーの変革を導くためには、社内参加型や全社横断など体型的な手段やイベントが必要となる。また、行動様式を変えるにはトップ発のリーダーシップが必要であり、日本では珍しいとはいえ、それは確かに存在する」という。
さらに、タイトな文化にはアドバンテージもあるという。「タイトな文化には、変革マネジメントにおいて明らかなメリットもある。最も重要なのが、ひとたび意思決定が下され、みんなの同意を取り付ければ、変革が速やかに行われることだ」
つまり、タイトな文化でイノベーションや変化を進めるにはトップ主導で、かつゆっくりとしたスピードで行う必要がある。そして、ゆっくり進めてきた変化が一旦浸透すると、組織内での変革は速やかに進むのだという。これが、外国人の視点による、日本における変化を成功させる方程式である。
本書を読了後、筆者は、「ゆっくりだけれども変化は可能」と考えると、日本の将来にそこまで悲観的でなくいられる気分になった。一方で、ゆっくりだと、変化を待っているとあっという間に10年、20年が過ぎ去り、私自身は定年を迎えてしまうので、不遇な立場にいる人や、旧式のシステムにあおりを食っている人たちに、長い間理不尽さや我慢を強いることになるとともに、割りを食う世代が出てきてしまう、とも感じた。
高以良潤子◎ライター、翻訳者、ジャーナリスト。シンガポールでの通信社記者経験、世界のビジネスリーダーへの取材実績あり。2015年よりAmazon勤務、インストラクショナルデザイナーを務めたのち、プログラムマネジャーとして、31カ国語で展開するウェブサイトの言語品質を統括するなど活躍。2022年より米国系IT企業勤務。