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2023.05.10 06:25

ドイツ人経営学者が日本企業再興を確信、日本悲観論に「NO」

『再興 THE KAISHA 日本のビジネス・リインベンション』(ウリケ・シェーデ著、日本経済新聞出版刊)

ビジネスにおいても、このタイトな文化は大きく影響する。「タイトな文化とルーズな文化という概念(正しい行動についての共通の合意)は、なぜ日本人経営者がそうした行動を取るのかを理解するのに役立つ。変革マネジメントのスピード、内容、進捗状況も明らかに異なる」
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また、毎日のビジネスシーンにもタイトな文化は深く浸透している。「日本のビジネス規範の内容は、3つの中核的な行動命題によって表現できる。(1)礼儀正しく思いやりを持つこと。(2)適切に行動すること。(3)迷惑をかけない、つまり、混乱を招く意思決定をしないこと、だ。

社会全体、あるいは、特定の企業内で礼儀正しく、適切で、正常と見做されるものから逸脱すると、混乱や不確実性を引き起こし、米国とは全く異なる形で制裁を受け、個人のキャリアを狂わすこともある。会議に遅れたり、髪を染めたり、派手な入れ墨があったり事前に根回し抜きに唐突に決定事項が発表されたりするのは、カリフォルニアのオフィスでは日常茶飯事かもしれないが、日本では許されない行為である」このように、商習慣ももちろん、タイトな文化にがっちり結びついているのだ。

危機をベースに規範コード化。だからバブル崩壊からも回復した


では、なぜ日本には「タイトな文化」が顕著に見られるのだろうか。著者は、「タイトな文化の根本メカニズム」を、以下のように説明している。
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「規範には実用的な理由がある。重要な目的に役立つから存在し持続するのだ。(中略)どのくらい社会秩序が必要とされるかは、外部の脅威にさらされる程度や、資源の制約によって、国や地域ごとに異なる。自然災害(例、地震、旱魃、飢饉)や地理的な脅威(戦争、病気)に繰り返しさらされる場所では、自助努力も交えながら、混乱を避け、有事に生存率を高める安全予防策や社会連帯のメカニズムをつくる可能性が高い。こうしたメカニズムは時間とともに、日常生活の中で許容可能な行動へとコード化されていく。年間で約1500回の地震が発生する日本では、このような深く根付いた連帯行動がいかに有益であるかを示す事例が多い」

また著者は、バブル崩壊で受けた痛手を考慮する上で、日本がいかに粘り強い回復を示してきたかを説明。「過去20年間で日本についての最も注目すべき点は、長く続く根深い危機と企業再構築の必要性に直面しながら、日本の社会基盤がレジリエンス(再起力、回復力)を示してきたことだ。1991年のバブル崩壊は、見方によっては米国の大恐慌の3倍の深刻さだったとされる。ところが驚くべきことに、日本では社会的、政治的な不安、攻撃的なポピュリズムの対等、貧困や犯罪の大発生などは見られず、不平等の拡大もかなり限定的だった。これは、社会危機に直面したときに日本は、経済成長よりも安定を、株価指標よりもゆっくりとした調整を、一部の人の利益よりも多くの人々の繁栄を優先させたからだ」

要するに、タイトな文化を下敷きに、最悪の混乱を免れ、ゆっくりだけれども着実に回復することにある意味「成功」してきた、と筆者は指摘している。
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文=高以良潤子 編集=石井節子

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