スポーツ

2023.04.05

2000円ラーメン食べつつスタンフォード大コーチが思う「富士そばの値段」

スタンフォード大学アメリカンフットボール部コーチ、河田剛氏。コーチ業の傍ら、シリコンバレーで日米双方のスタートアップのサポート/アドバイザーを務める

1月の末だったであろうか、サッカーの本田圭佑さんが、「日本のラーメンは安すぎる、次に食べる時は2000円払う!」と言ったことで論争が起きた。実際に安いこと、そして値段を人の努力によって上げない事が美学とされる我が国において、ラーメンがその値段になることを想像することは難しいが、それぐらいの価値があるということについては、大賛成である。

筆者が暮らす米国カリフォルニア州パロアルトにあるラーメン店「Ramen Kowa」のメニューには「豚骨ラーメン15.5ドル」「札幌味噌ラーメン17ドル」の文字が踊る。

筆者が暮らす米国カリフォルニア州パロアルトにあるラーメン店「Ramen Kowa」のメニューには「スパイシー味噌ラーメン17ドル」「クラシック醤油ラーメン15ドル」の文字が踊る。

富士そばと東南アジア

筆者が日本のものの値段、つまり物価の変遷を語るのに、いつも引用する例が「富士そば」である。私が好きなかき揚げそばは、2007年の渡米後16年経った今も(体感であるが)100円ぐらいしか値上がりしていない。しかし、物の値段が上がっていないということは、人に払われる賃金もそれなりにしか上がっていないということである。

続いて、70年代から80年代に、母親が行っていた東南アジアへの旅行。帰って来るたびに、桁外れに安い食事代、お土産の値段、ツアー全体のコストの安さ等を聞かされていた。ここ最近は使う言葉ではないが、「発展途上国」では物価の安さと比例して、人々の暮らしも豊かではないという話を母とし合った記憶も鮮明に残っている。

2023年、(日本以外は)コロナもどこ吹く風の今、それらの国の人達が、数十年前の私の母のように「日本は安い!」といって日本へやってきては、こんなにクオリティの高い食事がどうしてこんなに安いのか? と疑問を抱きながら富士そばから出てくるのである。

世界での存在感、相手にしている経済圏の広さ、安全性、すべてが先進国の中でもトップクラスなのに、物価だけ安い、つまり賃金が安い。外から見ている私にとっては、まるで日本という国やそこで暮らす国民の価値が低いと言われているようで、癪に障るのである。

「Ramen Kowa」のレシート。ラーメンとチャーハンを食べてこの値段、すでに円換算は怖くてできない

「Ramen Kowa」のレシート。ラーメンとチャーハンを食べてこの値段、円換算は怖くてできない

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文=河田剛 編集=石井節子

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