国内Web3で進む「海外流出」 コンテンツIP活用が勝敗を分ける

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水野:自治体だと、事例として挙がるのはきまって、新潟県山古志村(NFT・メタバースを活用した「デジタル村民」制度を立ち上げ)ですよね。

上田:そうなんです。自治体としても「Web3で何をやるのか」「自分のところがやる必要があるのか」と迷っているというか。

それから、一般の理解が追いついていないのも、Web3事業が進みにくい理由の一つです。一部のコミュニティなどではDAOと親和性の高いところもあると思います。ただみんながやるものでもないかなって。そういう一般化をどう進めていくかについても経産省としてはいま一度考えていく必要があると思います。

水野:たしかに。DAOはインセンティブ付与を前提で始まったというところもあるし、向き不向きはありますよね。どういったユースケースから立ち上がってくるかは、まだまだここから数年かけて……ということかもしれませんね。

上田:平成の30年あまりを経て、日本は確実に貧しくなってしまいました。GAFAが台頭してきたのは大きな出来事でしたし、やはり日本がITに先行投資してこなかった結果をつき付けられているのだと思います。

同じ轍を踏まないよう、Web3にはしっかり“張って”いきたいなと。そこで行政にできることは、法律や税制などの環境を整えることに尽きます。そこからのマーケット発展は、やはり各プレーヤーが作っていくことだと感じているので、いかに彼らが気持ちよくプレーできるかを考えるのが我々の使命だと思っています。

水野:僕らのような事業者も含め、Web3プレーヤーがいかに上田さんのような人や経産省を巻き込んでいけるかですね。

上田:クリエイターと対峙していて必要だと感じるのは、税制をはじめとした会計まわりの知識です。これまでクリエイターはコンテンツを作って勝負をしていましたが、Web3やメタバース、NFTの世界になると、会計や運営の知識も深く関わってくるなと感じていて。法務と会計まわりのプロは、プロジェクトの最初から巻き込んでおくべきです。リリース直前に法務へもっていって「チェックして」と言っても、わからないことだらけで「無理です」と言われてしまいますから。

水野:それがわかる人材を育てることも重要ですね。

上田:はい。ただ、それを行政として後押ししても、海外に出ていかれてしまうとつらい(笑)。でも、海外に行っても最終的に「やっぱり日本がビジネスしやすいね」と戻ってきてもらえるような土壌としての環境整備は必要だと考えています。

文=水野和寛 編集=露原直人

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