国内Web3で進む「海外流出」 コンテンツIP活用が勝敗を分ける

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上田:おっしゃる通りですね。私も「声を大にしてお願いしたい」のが、大手企業が持っているコンテンツIPをすべて開放してほしいということ。

Web3時代において、日本のコンテンツIPを軸にした戦略を練り、クリエイターの力を刺激するのはIPの開放だと思っています。

もちろん、ただ開放するだけではなく、IPホルダーにとってもオープンにすることで“うまみ”があるようなインセンティブ設計は必要だと思うのですが。

水野:よく韓国と比較されますよね。Web3に限らず、韓国は、芸能やアニメといったエンタメ産業への国の支援が手厚い印象を受けます。アニメ制作にしても、制作コストと同じか、それ以上の助成金がもらえる、というような話を聞いたこともあります。

上田:韓国はそもそものマインドが違うと感じますね。人口の問題が関係していて、1億人以上いる日本と比較すると、5000万人の韓国では外需獲得が必須です。そのマインドの違いがここ10~20年で表れています。

K-POPや映画、韓流ドラマみたいなコンテンツも同じで、特にアイドルについてはメンバー選びもグローバルを意識しています。そこから売り出しまでを一つのパッケージとして作り上げている。ここが完全に「追い抜かれた」と感じる部分です。

水野:日本のコンテンツ業界が参考にすることはありますか?

上田:例えば日本がいまから同じことをやるとしたら、また10~20年かかるはずです。そこに無理に追いつこうとするよりも、日本にいまあるサブカル分野やニッチな領域のIPで勝負するほうがいいのかなと。Web3の波が来ているし、その世界に合わせて事業展開をしていくほうが、勝ち筋はあるのではと思います。

企業はWeb3活用の検討段階に

水野:とはいえ、Web3がくるぞ!と僕らも頑張って事業をしていますが、FTXやシリコンバレーバンクの破綻で、Web3産業の先行きを不安視するプレーヤーも出てきていますよね。

上田さんのいらっしゃるコンテンツ産業課として、ここからの1~2年はどのような温度感でWeb3の産業をご覧になっているのでしょうか。

上田:「冬の時代」といわれていますし、2022年でいったんバブルは落ち着いたのかなとみています。フワフワしていたのが少しずつ地に足がついて、いろいろな企業が「うちなら何ができるか」「やはり撤退しようか」といった検討段階に入っている感じです。ただ、実際にWeb3のユースケースが少ないというのが最大のネックですよね。企業に限らず自治体にとっても。
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文=水野和寛 編集=露原直人

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